「精神障害者手帳の3級って、持っていてメリットはあるの?」「申請したのに通らなかった」と気になっている方に向けた記事です。厚生労働省の判定基準をもとに、3級がどんな状態の人を想定した等級か、3級で使える主な制度、非該当になったときに取れる選択肢を順に整理します。等級は診断名だけで決まるものではないことも、あわせて説明します。
精神障害者保健福祉手帳3級は「日常生活若しくは社会生活が制限を受ける」程度の等級です
精神障害者保健福祉手帳の3級は、1級から3級までのうち、もっとも軽い区分に当たる等級です。「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律施行令」第6条では、3級の状態を「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度」と定めています。
この記事の結論は、次の3つです。
- どんな人:病名ではなく、精神疾患の状態と、日常生活や社会生活の能力の状態をあわせて総合的に判定される
- メリット:所得税・住民税の障害者控除、障害者雇用率の算定など、等級にかかわらず使える全国共通の制度が中心になる
- 落ちたとき:通知の理由を確かめ、審査請求、時期を置いた再申請、手帳がなくても使える制度という複数の道がある
手帳は、身体障害者手帳・療育手帳と並ぶ3種類の障害者手帳の一つです。3つの手帳の等級のしくみは「障害者手帳の種類と等級」で比べています。
3級はどんな人?判定基準の例示で見るイメージ
3級は、ひとりで外出や家事ができても、ストレスが大きい場面や状況が変わる場面で対処が難しくなる状態が、目安として示されている等級です。厚生労働省の通知「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」(別添の説明を含む)では、3級のイメージを次のように例示しています。
- 一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難
- 日常的な家事はこなせるが、状況や手順が変化すると困難が生じることもある
- 金銭管理はおおむねできる
- 就労継続支援などを利用する人や、保護的配慮のある事業所で雇用契約による一般就労をしている人も含まれる
判定基準の表では、3級の日常生活の能力として「規則的な通院・服薬はおおむねできるがなお援助を必要とする」「金銭管理や計画的で適切な買物はおおむねできるがなお援助を必要とする」といった書き方がされています。ひとりで「おおむねできる」ものの、なお助言や見守りが要る、という点が3級の特徴です。
これはあくまで「おおむね」のイメージです。「B型に通っているから3級」「働いているから3級」と逆算できるものではありません。2級との違いは「精神障害者保健福祉手帳2級」、1級は「精神障害者保健福祉手帳1級」で説明しています。
3級は診断名で決まる?病名だけでは決まりません
精神障害者保健福祉手帳の等級は、病名だけで決まるしくみではありません。判定基準では、精神疾患(機能障害)の状態と、能力障害(活動制限)の状態を確認し、両方をあわせて総合的に判定するとされています。
判定基準の「運用に当たって留意すべき事項」は、この2つの関係は病気の種類や状態によって必ずしも同じではないとしています。同じ診断名でも、生活への影響の程度によって等級は変わりえます。診断書の「日常生活能力の程度」欄については、次のような目安が示されています。
| 日常生活能力の程度(診断書の欄) | 等級の目安 |
|---|---|
| 精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる | 非該当 |
| 精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける | おおむね3級程度 |
| 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする | おおむね2級程度 |
| 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする | おおむね1級程度 |
判定では、現在の状態だけでなく、おおむね過去2年間の状態や今後2年間に予想される状態も考慮されます。自分がどの等級に当たりそうかは、診断書を書く主治医に相談してください。発達障害の場合は「ADHD・発達障害と障害者手帳」、うつ病などの場合は「うつ病・適応障害と障害者手帳」で整理しています。
3級のメリットは?3級で使える主な制度
3級で使える制度は、税の控除や障害者雇用率の算定など、手帳の等級にかかわらず対象になる全国共通のものが中心です。一方で、自治体の医療費助成や手当は1級・2級までを対象にしていることがあり、3級では使えない制度もあります。一次情報で確認できたものを表にまとめました。
| 制度 | 3級の扱い | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 所得税の障害者控除 | 障害者として27万円(特別障害者の40万円は1級) | 国税庁 No.1160 |
| 住民税の障害者控除 | 障害者として26万円 | 志木市のてびき |
| 住民税の非課税 | 本人の前年の合計所得金額が135万円以下なら非課税 | 地方税法第295条・志木市のてびき |
| 障害者雇用率の算定 | 精神障害者保健福祉手帳の所持者は1級から3級まで対象 | 障害者雇用促進法第37条 |
| NHK受信料の全額免除 | 手帳を持つ人がいる世帯で、世帯全員が市民税非課税の場合 | 志木市のてびき |
| 埼玉県の重度心身障害者医療費助成 | 対象外 | 埼玉県のページ |
埼玉県「重度心身障害者医療費助成制度」では、精神の手帳の対象は1級で、令和8年1月からは自立支援医療(精神通院)を受けている2級も精神通院の自己負担分に限り対象となり、対象拡大の時期や申請方法は市町村によって異なるとされています。
所得税の障害者控除は、国税庁「No.1160 障害者控除」で、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人は障害者に当たると案内されています。本人だけでなく、手帳を持つ家族を扶養している人の控除にも使えます。住民税の非課税は「地方税法」第295条に定めがあり、控除や非課税を受けるには年末調整や確定申告などで申し出る必要があります。
鉄道・バス・携帯電話料金などの割引は、国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」で、地域や事業者によって行われていることがあるサービスとして案内されています。3級が対象かどうかは各社の公式ページで確認してください。分野別の一覧は「障害者手帳のメリット一覧」にあります。
障害者雇用で働くときの算定対象になる
精神障害者保健福祉手帳を持っていると、3級でも、企業の障害者雇用率の算定対象になります。厚生労働省「障害者雇用のご案内」(令和8年4月1日現在)では、雇用率の対象となる精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人とされています。
民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7%です。週20時間以上30時間未満で働く精神障害者は当分の間1人、週10時間以上20時間未満は0.5人として数えられます。短い時間から働き始めたい人にとって、企業が採用を考えやすくなるしくみです。障害者雇用の基本は「障害者雇用とは」、手帳がない場合の考え方は「手帳なしで障害者雇用は使える?」で紹介しています。
3級に落ちた・非該当だったときの選択肢
申請して手帳が交付されなかったときは、「理由を確かめる」「審査請求を考える」「時期を置いて改めて申請する」「手帳がなくても使える制度を使う」の4つの方向から考えられます。厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」では、都道府県知事は手帳を交付しない決定をしたときは、速やかに申請者に通知しなければならないとされています。
- 通知の内容と理由を確かめる:届いた通知書を読み、分からない点は市区町村の窓口に聞きます。診断書の「日常生活能力の程度」などの書き方は、主治医と一緒に振り返ると整理しやすくなります
- 審査請求を考える:「行政不服審査法」では、処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、処分の日の翌日から1年以内が審査請求の期間とされています(正当な理由がある場合を除く)。行政庁は不服申立ての方法と期間を書面で知らせることになっているため、通知書に書かれた窓口と期限に従ってください
- 時期を置いて改めて申請する:判定では、おおむね過去2年間と今後2年間の状態も考えられます。治療の経過や生活の状態が変わったときに、改めて申請するかを主治医と相談する方法があります。申請の扱いは窓口で確認してください
- 手帳がなくても使える制度を使う:こころの情報サイトでは、自立支援医療(精神通院医療)と、障害者総合支援法による障害福祉サービスは、手帳の有無にかかわらず受けられると説明されています
手帳の申請書類や流れは「精神障害者保健福祉手帳の申請方法」で紹介しています。
手帳なしで使える支援の例
非該当になっても、使える支援がなくなるわけではありません。代表的なものは次のとおりです。
- 就労継続支援B型などの障害福祉サービス:市区町村の支給決定を受けて、障害福祉サービス受給者証で利用します。考え方は「障害者手帳がなくてもB型は使える?」、手続きは「受給者証とは」にまとめています
- 自立支援医療(精神通院医療):通院の医療費の自己負担を軽くする制度です。「自立支援医療とB型は併用できる?」で紹介しています
- ハローワークの専門窓口:ハローワークインターネットサービス「障害のある皆様へ」では、障害者手帳を持っていない人も専門の職業相談を利用できると案内されています
2級から3級になった・等級に納得できない場合
更新で等級が変わったときや、交付された等級に納得できないときも、選択肢は一つではありません。実施要領では、有効期間中でも精神障害の状態が重くなった(または軽くなった)ときは、等級の変更を申請できるとされています。埼玉県精神保健福祉センター「精神障害者保健福祉手帳」でも、有効期限内の等級変更申請が案内されています。決定そのものに不服がある場合は、上で紹介した審査請求の期間も確認しておきましょう。
3級の手帳を申請・更新する前に確認したいポイント
3級を見込んで申請するときも、更新するときも、事前に確認しておくと手続きが進めやすくなります。次の点をチェックしてみてください。
- 精神障害で初めて受診した日から、6か月以上たっているか
- 診断書の作成日が、自治体の求める期間内か(埼玉県は申請日から3か月以内)
- 使いたい制度(税・雇用・医療費など)が、3級でも対象になっているか
- 手帳の有効期限はいつか(2年ごと・期限の3か月前から更新できる)
更新の手順は「障害者手帳の更新手続き」で紹介しています。等級の見込みは主治医に、制度の対象かどうかは市区町村の窓口に相談してください。
志木市の場合(窓口・手続きの入口)
志木市にお住まいの方は、精神障害者保健福祉手帳の申請や相談は、市役所の福祉部 共生社会推進課が窓口です。志木市「精神障がい者保健福祉手帳の交付」では、申請窓口は共生社会推進課 障がい者福祉グループとされています。
| グループ | 電話 |
|---|---|
| 障がい者福祉グループ | 048-473-1449 |
| 障がい者支給グループ | 048-456-5363 |
| 共生社会推進グループ | 048-456-5364 |
所在地は埼玉県志木市中宗岡1丁目1番1号です(志木市「共生社会推進課」)。
- 申請に必要なもの:市のページでは、初診日から6か月以降の手帳用の診断書、または年金証書の写しなどが必要とされています。市の「障がい福祉制度のてびき」(令和8年4月現在)では、診断書は記入から3か月以内のもので、申請書・マイナンバーカード・同意書も挙げられています
- 診断書料の補助:手帳の交付のための診断書料の一部を補助する制度があり、令和2年10月から非課税の方が対象と案内されています
- 3級で使える市・県の制度:てびきでは、住民税の障害者控除(26万円)や、世帯全員が市民税非課税の場合のNHK受信料の全額免除に、精神障害者保健福祉手帳の所持者が含まれています。一方、「重度心身障がい者医療費の助成」「重度心身障がい者手当」、福祉タクシー利用券などの補助は、精神の手帳については1級・2級が対象者欄に書かれています(医療費の助成の2級は自立支援医療の自己負担分のみ)
朝霞市・新座市・富士見市・和光市など近隣の市では、窓口の名前や独自の制度が異なることがあるため、各市の公式ページで確認してください。
ぽちぽちの道の場合
3級の手帳を持っている方や、非該当で次の一歩を迷っている方からも、日中の過ごし方や働き方の相談をお受けしています。手帳の申請や審査請求を代わりに行うことはできませんが、B型の利用を考えるときの相談はできます。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化したB型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに駅からの道のりや通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心です。データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、スタッフと生成AIがサポートします。
状況や手順が変わると疲れやすい方もいるため、週1日からの通所も相談できます。工賃については見学時にご案内します。「手帳は3級だった」「申請が通らなかった」という段階でも、見学やLINEでの相談を受け付けています。
精神障害者保健福祉手帳3級についてよくある質問
Q. 精神障害者保健福祉手帳3級は、どんな人が対象になりますか?
A. 政令で「日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度」とされる状態の人です。判定基準では、一人で外出できるが過大なストレスがかかると対処が難しい、といった例が示されています。病名だけで決まるものではないため、見込みは主治医に相談してください。
Q. 精神障害者手帳3級だと、障害者雇用の算定対象になりますか?
A. なります。障害者雇用促進法では、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が雇用率の算定対象とされ、等級による区別はありません。ただし、求人に応募できるかどうかは求人ごとの条件によるため、ハローワークなどで確認してください。
Q. 精神障害者保健福祉手帳を申請して非該当になったら、もう一度申請できますか?
A. 状態が変わったときに改めて申請することを、主治医や市区町村の窓口に相談できます。判定では、おおむね過去2年間と今後2年間の状態も考慮されるため、前回からの変化を主治医と整理しておくと相談しやすくなります。申請の時期や持ち物は窓口で確認してください。
Q. 精神障害者保健福祉手帳が交付されなかったとき、審査請求はいつまでにできますか?
A. 行政不服審査法では、原則として処分があったことを知った日の翌日から3か月以内、処分の日の翌日から1年以内とされています。正当な理由がある場合は例外があります。通知書に不服申立ての方法と期限が書かれているので、その内容に従ってください。
Q. 精神障害者保健福祉手帳3級でも、就労継続支援B型に通えますか?
A. 3級だから通えないと決まっているわけではありません。判定基準の3級の例示にも、就労継続支援などを利用する人が含まれています。B型の利用は手帳の等級ではなく、市区町村の支給決定と受給者証の手続きで決まるため、窓口や事業所に相談してください。
まとめ
精神障害者保健福祉手帳3級は、日常生活や社会生活に制限を受ける程度の状態を、病名だけでなく生活への影響とあわせて判定する等級です。3級でも税の障害者控除や雇用率の算定などの制度が使え、非該当になったときも、審査請求や再申請、手帳なしで使える支援といった選択肢があります。
手帳の等級や日中の過ごし方で迷ったら、LINEでの相談や見学から始められます。質問だけでも大丈夫です。制度をまとめて確認したい方は「B型事業所の選び方チェックリスト」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
障害年金の3級は手帳の3級とは別の基準で、障害年金3級とは?障害厚生年金だけの等級と月額の目安で解説しています。
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

