「障害者雇用で働きたいけれど、手帳は持っていない」「手帳を取るかまだ決められない」と迷っていませんか。この記事では、障害者雇用で手帳なしの場合にどうなるのかを厚生労働省の資料と法律の条文で整理し、手帳がなくても使える相談先と志木市での相談の入口を紹介します。
障害者雇用は手帳なしだと働けない?答えは「求人と企業の判断による」
障害者手帳がない場合に障害者雇用枠の求人へ応募できるかどうかは、一律には決まっていません。求人ごとの応募条件や、企業の判断によって変わります。ただ、企業が法律で求められている「障害者雇用率」の計算では、精神障害のある方は精神障害者保健福祉手帳を持っている人に限って数えるしくみになっているため、応募条件に手帳の所持を挙げる求人もあります。
まず押さえておきたいのは、次の4点です。
- 雇用率の算定は手帳が基準:精神障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が算定の対象です
- 応募できるかは求人ごと:手帳なしで応募できるかの全国共通のルールはなく、求人票や企業への確認が必要です
- 手帳なしでも使える支援がある:ハローワークの障害者向けの相談や、地域障害者職業センターは、手帳がない方も利用できると案内されています
- 働き方の選択肢は1つではない:一般の求人で障害を伝えて配慮を相談する、手帳の取得を検討する、福祉サービスで準備するなどの道があります
「手帳がないから働けない」と決まっているわけではありません。障害者雇用そのものの基本は「障害者雇用とは?B型の次のステップとして知る」で紹介しています。
障害者雇用で手帳が求められやすいのはなぜ?雇用率のしくみ
障害者雇用で手帳が求められやすいのは、企業に義務づけられた「障害者雇用率」の計算に、手帳などによる確認が関わっているためです。法律では「障害者」と「雇用率の対象になる障害者」が書き分けられています。
障害者雇用率制度とは
障害者雇用率制度とは、企業や国・自治体などに、雇用する労働者のうち一定の割合以上の障害者を雇うよう義務づける制度のことです。厚生労働省のリーフレット「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」によると、民間企業の法定雇用率は令和8年7月に2.7%へ引き上げられ、従業員37.5人以上の企業が対象になっています。
雇用率の対象になる障害者(対象障害者)
雇用率の計算に入る「対象障害者」は、障害者雇用促進法の第37条第2項で定められています。厚生労働省「障害者雇用のご案内」(令和8年4月1日現在)の説明とあわせて整理すると、次のとおりです。
| 区分 | 雇用率の対象になる人 | 手帳との関係 |
|---|---|---|
| 身体障害者 | 身体障害者手帳1〜6級に該当する人 | 身体障害者手帳の等級が基準 |
| 知的障害者 | 児童相談所などで知的障害者と判定された人 | 判定機関の判定が基準 |
| 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 | 手帳の交付が条件 |
発達障害は精神障害者保健福祉手帳の対象なので、手帳があれば精神障害者として算定されますが、知的障害者の判定を受けている場合を除き、手帳がなければ算定されません。条文は e-Gov法令検索の「障害者の雇用の促進等に関する法律」で確認できます。
法律上の「障害者」は手帳の所持を条件にしていない
同じ障害者雇用促進法でも、第2条の「障害者」の定義は、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受けたり、職業生活を営むことが著しく困難だったりする人とされています。この定義の文には、手帳を持っていることは書かれていません。
この法律には、障害者への差別の禁止と合理的配慮の提供も定められています(厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」)。手帳がない場合に受けられる配慮は職場との話し合いで決まるため、困りごとを具体的に伝える準備が役立ちます。
手帳がないときの働き方の選択肢を比べる
手帳がない場合の働き方は、大きく4つに分けて考えると整理しやすくなります。どれが正解ということはなく、体調や職場に伝えたいことによって選び方が変わります。
| 選択肢 | どんな働き方か | 手帳 | 考えておきたいこと |
|---|---|---|---|
| 一般の求人で障害を伝えずに働く(クローズ) | 障害を開示せずに一般の求人枠で働く | 不要 | 配慮を受けにくいことがある |
| 一般の求人で障害を伝えて働く(オープン) | 障害を開示し、必要な配慮を相談しながら働く | 不要 | 伝える範囲と内容を準備しておく |
| 手帳の取得を検討してから障害者雇用枠へ | 手帳を取り、障害者雇用枠の求人に応募する | 求人の条件による | 申請には初診日から6か月以上などの条件がある |
| 福祉サービスで準備してから就職をめざす | 就労移行支援やA型・B型で生活リズムや作業に慣れる | 必須ではない場合がある | 利用には市区町村の手続き(受給者証)が必要 |
障害を伝えるかどうかは「オープン就労とクローズ就労の違い」、手帳を持つ利点と注意点は「障害者手帳のメリット一覧」と「障害者手帳のデメリット」、診断がない段階の方は「発達障害グレーゾーンの働き方」で紹介しています。
手帳の取得を考える場合
精神障害者保健福祉手帳は、その精神障害で初めて受診した日から6か月以上たっていることが申請の条件です。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」では、申請先は市区町村の担当窓口と説明されています。手帳の種類と等級は「障害者手帳の種類と等級」、申請の条件と流れは「障害者手帳の申請条件と流れ」で紹介しています。
等級は病名だけで決まるしくみではなく、厚生労働省「障害者手帳について」では精神疾患の状態と能力障害の状態の両面から総合的に判断されるとしています。見込みは主治医に相談してください。
手帳がなくても使える就職の相談先
手帳がなくても、就職に向けた専門の相談先は利用できます。公式に「手帳がなくても利用できる」と書かれているものと、条件を確認したいものを分けました。
| 相談先 | どんな支援か | 手帳がない場合 |
|---|---|---|
| ハローワーク(障害のある方への専門的な支援) | 専門の職員・相談員による職業相談や職業紹介 | 手帳を持っていない方も利用できると案内されている |
| 地域障害者職業センター | 職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援など | 手帳を交付されていない方も利用できると案内されている |
| 障害者就業・生活支援センター | 身近な地域で、就業面と生活面を一体的に支援 | 利用の条件は各センターに確認 |
| 就労移行支援などの障害福祉サービス | 一般就労に向けた訓練や、働く場の提供 | 精神障害のある方は手帳の有無にかかわらず利用できると説明されている(受給者証の手続きは必要) |
ハローワークの専門的な支援
ハローワークインターネットサービス「障害のある皆様へ」では、障害者手帳を持っていない方も専門的な支援を利用できると案内されています。相談内容によっては、主治医の診断書やハローワークの書式による意見書を求められることがあります。
厚生労働省「発達障害者の就労支援」によると、ハローワークには障害特性をふまえて支援する「精神・発達障害者雇用サポーター」が配置されています。配置状況は各ハローワークに確認してください。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、ハローワークと協力して職業評価やジョブコーチ支援などを行う機関です。JEEDのリーフレット「精神障害のある方・発達障害のある方に向けた支援内容のご紹介」では、利用は無料(交通費・食費などは除く)で、障害者手帳を交付されていない方も利用できると案内されています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、身近な地域で就業面と生活面の支援を一体的に行う機関です。厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」によると、令和8年4月1日時点で全国に340か所設置されています。担当のセンターや手帳がない場合の利用条件は、市区町村の窓口やセンターに確認してください。
就労移行支援・A型・B型などの福祉サービス
こころの情報サイトでは、障害者総合支援法による障害福祉サービスは、精神障害のある方であれば手帳の有無にかかわらず受けられると説明されています。就労移行支援やA型・B型もこれに含まれますが、利用には市区町村での受給者証の手続きが必要です。受給者証のしくみは「受給者証とは」、手帳なしでB型を使う場合は「障害者手帳がなくてもB型は使える?」、サービスごとの違いは「A型・B型・就労移行支援の違い」で紹介しています。
応募や相談の前に確認したいポイント
手帳がない状態で働き方を考えるときは、次の点を確認しておくと相談先で話が進みやすくなります。
- [ ] 気になる求人の応募条件に、障害者手帳の所持が書かれているか
- [ ] 主治医に、診断書や意見書をお願いできる状況か
- [ ] 手帳を取るかどうかについて、メリットとデメリットを整理できているか
- [ ] 職場に伝えたい困りごとと、必要な配慮を言葉にできているか
- [ ] すぐに就職するか、福祉サービスで準備してからにするかを考えたか
働き始めてから手帳の取得を求められるのでは、と不安な方もいるかもしれません。厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要」では、本人の意思に反して障害者である旨の申告や手帳の取得を強要してはいけないこと、それを拒んだことを理由に解雇などの不利益な取扱いをしてはいけないことが、企業向けに示されています。
志木市の場合(相談の入口)
志木市にお住まいの方は、手帳の申請や障害福祉サービスの相談は市役所の福祉部 共生社会推進課、仕事探しの相談はハローワーク朝霞が入口になります。志木市「共生社会推進課」の案内では、課の中に3つのグループがあります。
| グループ | 電話 |
|---|---|
| 障がい者福祉グループ | 048-473-1449 |
| 障がい者支給グループ | 048-456-5363 |
| 共生社会推進グループ | 048-456-5364 |
所在地は埼玉県志木市中宗岡1丁目1番1号です。志木市「精神障がい者保健福祉手帳の交付」によると、精神障害者保健福祉手帳の申請窓口は共生社会推進課 障がい者福祉グループで、住民税非課税の方への診断書料の一部補助も案内されています。福祉サービスの相談は、電話で用件を伝えて担当を確認すると確実です。
仕事探しの相談先について、埼玉労働局の「ハローワーク朝霞」のページでは、管内を朝霞市・志木市・新座市・和光市としています。所在地は朝霞市本町1-1-37、電話は048-463-2233です。
朝霞市・新座市・富士見市・和光市などにお住まいの方は、窓口の名前や受付方法が異なることがあるため、各市の公式ページで確認してください。
ぽちぽちの道の場合
「手帳はまだないけれど、いきなり就職するのは不安」「働く前に、生活リズムやパソコン作業に慣れておきたい」という段階の方もいます。就労継続支援B型は、そうした準備の場の一つとして考えることができます。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化したB型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに駅からの道のりや通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、スタッフと生成AIがサポートします。一般就労やA型をめざす考え方は「B型事業所から一般就労・A型を目指すには?」でも紹介しています。
B型の利用に手帳が必須ではない場合もありますが、対象になるかは市区町村の判断によります。週1日からの通所も相談でき、工賃は見学時にご案内します。「手帳を取るか迷っている」「障害者雇用を考える前に何から始めればいいか分からない」という段階でも、見学やLINEでの相談を受け付けています。
手帳なしの障害者雇用についてよくある質問
Q. 障害者手帳がなくても、障害者雇用枠の求人に応募できますか?
A. 求人ごとの条件と企業の判断によるため、一律には決まっていません。雇用率の計算では精神障害のある方は手帳所持者が対象になるため、手帳を条件にする求人もあります。求人票を確認し、企業やハローワークに問い合わせてください。
Q. 手帳がないと、障害者雇用率にはカウントされないのですか?
A. 精神障害のある方については、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人が雇用率の算定対象と、障害者雇用促進法で定められています。手帳がない場合は、知的障害者の判定を受けている場合を除き、精神障害や発達障害があっても算定されません。
Q. 手帳なしでもハローワークの障害者向けの相談は使えますか?
A. ハローワークインターネットサービスでは、障害者手帳を持っていない方も専門的な支援を利用できると案内されています。相談内容によっては、主治医の診断書や意見書を求められることがあります。
Q. 就職したあとに、会社から手帳を取るよう強く言われることはありますか?
A. 厚生労働省のガイドラインの概要では、本人の意思に反して手帳の取得を強要してはいけないこと、取得を拒んだことを理由に解雇などの不利益な取扱いをしてはいけないことが企業向けに示されています。困ったときは、ハローワークなどに相談してください。
Q. 手帳がない状態で、就労移行支援やB型を使って就職の準備はできますか?
A. 精神障害のある方については、障害福祉サービスは手帳の有無にかかわらず利用できると、こころの情報サイトで説明されています。ただし受給者証の手続きが必要で、対象になるかや必要書類は市区町村の窓口で確認してください。
まとめ
手帳なしで障害者雇用枠に応募できるかは求人と企業の判断によりますが、ハローワークの専門的な支援や地域障害者職業センターは手帳がなくても利用できると案内されています。一般求人で配慮を相談する、手帳の取得を検討する、福祉サービスで準備するといった選択肢もあります。
働く前の準備としてB型を考え始めたら、見学や相談から始められます。見学だけでも大丈夫です。制度をまとめて確認したい方は「B型事業所の選び方チェックリスト」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
- 見学だけでもOK
- その場で決めなくてOK
- ご家族・支援者と参加OK
何かを始めたい、新しい一歩を踏み出したい方へ
まずは、見学・相談から
始めてみませんか?

監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

