障害者手帳を勧められたものの、「持つと何か不利になるのでは」と迷っている方は少なくありません。この記事では、障害者手帳のデメリットとして挙がりやすい点を、申請・更新の手間、使うときの提示、勤務先に知られるか、運転免許との関係に分けて、厚生労働省や警察庁などの公的な資料をもとに整理します。取るかどうかを落ち着いて考える材料にしてください。
障害者手帳のデメリットは「手間」と「気持ち」と「知られ方」が中心です
障害者手帳を持つデメリットとして考えられるのは、主に手続きの手間、心理的な抵抗、使う場面で手帳を見せる必要があることの3つです。国立精神・神経医療研究センターの「こころの情報サイト」は、精神障害者保健福祉手帳を持つことで不利益が生じることはないと説明しています。
まず押さえておきたい結論は、次の3つです。
- 持つことによる不利益:精神障害者保健福祉手帳については、持つことで不利益が生じることはないと説明されています(こころの情報サイト)
- 手間はかかる:精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新が必要で、そのたびに診断書などをそろえます
- やめることもできる:障害が軽くなれば、手帳を返したり、更新しなかったりすることもできます
ただしこの説明は制度上のもので、周りの受け止め方まで保証するものではありません。気になりやすい場面を一つずつ見ていきます。
障害者手帳のデメリットとして挙がりやすい5つの点
障害者手帳とは、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類をまとめた呼び方です。種類ごとの違いは「障害者手帳の種類と等級」で解説しています。デメリットとして挙がりやすい点と、実際のしくみを表にまとめました。
| 気になる点 | 実際のしくみ | 確認先 |
|---|---|---|
| 申請・更新が面倒 | 精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新。身体障害者手帳は原則更新なし(再認定の場合あり) | 市区町村の障害福祉窓口 |
| 使うたびに見せる必要がある | 割引などは手帳の提示が基本。内容は事業者ごとに違う | 各事業者の公式案内 |
| 「障害者」と認められることへの抵抗 | 手帳は日常生活・社会生活の制限の程度を認定するもの。等級は総合的に判定される | 主治医・窓口 |
| 勤務先に知られるか | 会社が障害を把握するときは、本人の申告や同意を前提とする手順が国のガイドラインで示されている | 厚生労働省のガイドライン |
| 運転免許に影響するか | 免許の判断は手帳の有無ではなく、一定の病気の症状で行われるしくみ | 各都道府県警察の運転適性相談窓口 |
申請・更新の手間がかかる
手続きの手間は、多くの人が感じるデメリットです。精神障害者保健福祉手帳は、厚生労働省の「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領」で有効期限が2年とされ、続けて使うには診断書などをそろえて更新します。身体障害者手帳は原則として更新がなく、療育手帳の再判定は自治体の運用によります(埼玉県では再判定がある人とない人がいます)。
申請の流れは「障害者手帳の申請条件と流れ」「精神障害者保健福祉手帳の申請方法」、更新は「障害者手帳の更新手続き」にまとめています。
使うときに手帳を見せる必要がある
割引やサービスを使うときは、窓口で手帳を見せるのが基本です。たとえば志木市の「障がい者福祉制度のてびき(令和8年4月)」では、タクシー運賃の10%割引は身体障害者手帳・療育手帳の提示で受けられると案内されています(精神障害者保健福祉手帳の記載はありません)。割引の対象になる手帳の種類や内容は、事業者や自治体によって違います。
手帳の情報をスマートフォンに登録する民間アプリ「ミライロID」もありますが、使えるのは導入している事業者だけです。割引の例は「障害者手帳でうけられる割引・サービス」で紹介しています。
「障害者」と認められることに抵抗がある
手帳を持つことに気持ちの抵抗を感じるのは、自然なことです。精神障害者保健福祉手帳の等級は、病名だけで決まるしくみではありません。厚生労働省の「障害等級の判定基準」では、精神疾患の状態と、日常生活や社会生活でどのくらい援助が必要かという能力障害の状態をあわせて総合的に判定するとされています。
「判定基準の運用に当たって留意すべき事項」でも両者の関係は一律には論じられないとされ、同じ診断名でも等級は変わりえます。見込みは主治医に相談してください。
勤務先や周りに知られるのが心配
会社が社員の障害を把握・確認するときの手順は、厚生労働省の「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」で示されています。採用後に確認する場合は社員全員に同じ方法で申告を呼びかけるのが原則で、本人の意思に反して申告や手帳の取得を強要してはいけないこと、拒んだことを理由に解雇などの不利益な扱いをしてはいけないことが挙げられています。
一方で、自分から勤務先に書類を出すことで伝わる場面はあります。年末調整で障害者控除を受ける場合、勤務先に出す「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、手帳の種類や交付年月日、障害の等級などを書く欄があります。職場に伝えるかどうかの考え方は「オープン就労とクローズ就労の違い」、通所を知られたくない不安は「知人に知られたくない」でも扱っています。
運転免許への影響が心配
運転免許の判断は、手帳を持っているかどうかではなく、病気の症状で行われるしくみです。警察庁の「運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について」では、統合失調症、てんかん、そううつ病、重度の眠気の症状を呈する睡眠障害などが挙げられ、統合失調症やそううつ病は、安全な運転に必要な能力を欠くおそれのある症状を呈しないものは除かれています。
免許の取得時や更新時には、過去5年以内に病気が原因で意識を失ったことがあるかなどを答える「質問票」を出します。警察庁は、質問票の内容でただちに免許が取り消されるわけではない一方、うその記載には罰則があると案内しています。運転に不安があるときは、各都道府県警察の「運転適性相談窓口」に相談できます。
なお、生命保険やローンなど民間の契約で手帳がどう扱われるかは、公的な資料で確認できなかったため、この記事では扱っていません。気になる場合は契約先に直接確認してください。
デメリットはメリットと並べて考えると判断しやすい
手帳を取るかどうかは、デメリットだけでなく、受けられる支援と並べて考えると判断しやすくなります。国税庁「No.1160 障害者控除」によると、所得税の障害者控除は障害者27万円、特別障害者40万円で、精神障害者保健福祉手帳1級の人は特別障害者に当たります。
また、障害者雇用促進法で企業の雇用率に算定される精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳を持っている人です。税の控除や割引、雇用の選択肢などの全体像は「障害者手帳のメリット一覧」にまとめています。
自立支援医療(精神通院医療)や障害福祉サービスのように、手帳の有無にかかわらず使える制度もあります。詳しくは「障害者手帳がなくてもB型は使える?」「手帳なしで障害者雇用」をご覧ください。
手帳を取る前に確認したいポイント
迷ったときは、「いま手帳があると助かる場面があるか」から考えると整理しやすくなります。申請の前に、次の点を確認しておくと安心です。
- 使いたい割引や控除、雇用の選択肢があるか
- 2年ごとの更新(精神の場合)の手間を続けられそうか
- 年末調整などで勤務先に書類を出すことになるか
- 運転に不安がある場合、運転適性相談窓口に相談したか
- 主治医に、手帳を取ることについて意見を聞いたか
いったん取った手帳を手放すこともできます。こころの情報サイトでは、障害が軽くなれば手帳を返すことや更新しないこともできると説明されています。等級に納得できないときは、有効期間中でも等級の変更を申請できると実施要領に定められています。取るか迷っている段階でも、LINEでの相談で気軽に話を聞かせてください。
志木市の場合(窓口・手続きの入口)
志木市にお住まいの方は、障害者手帳の相談・申請は市役所の福祉部 共生社会推進課が窓口です。身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の市のページでは、いずれも問い合わせ先が障がい者福祉グループになっています。
| グループ | 電話 |
|---|---|
| 障がい者福祉グループ | 048-473-1449 |
| 障がい者支給グループ | 048-456-5363 |
| 共生社会推進グループ | 048-456-5364 |
所在地は埼玉県志木市中宗岡1丁目1番1号です(志木市「共生社会推進課」)。
- 精神障害者保健福祉手帳:志木市「精神障がい者保健福祉手帳の交付」では、初診日から6か月以降の診断書、または年金証書の写しなどが必要とされ、非課税の方を対象に診断書料の一部を補助すると案内されています
- 身体障害者手帳:志木市「身体障がい者手帳の交付」では、診断書を書けるのは身体障害者福祉法第15条で指定された医師のみとされ、住民税非課税の方への診断書料の補助(上限3,000円)が案内されています
- 療育手帳:志木市「療育手帳の交付」では、Ⓐ(最重度)・A(重度)・B(中度)・C(軽度)の区分が案内されています
持ち物はページとてびきで表現が違うことがあるため、申請前に窓口で確認してください。朝霞市・新座市・富士見市・和光市など近隣の市では、窓口の名前や補助の有無が異なることがあるため、各市の公式ページで確認してください。
ぽちぽちの道の場合
手帳を取るかどうか迷っている段階でも、日中の過ごし方や働き方の相談はできます。ぽちぽちの道では手帳の申請を代わりに行うことはできませんが、B型の利用を考えるときの相談はお受けしています。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化したB型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに実際の通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、スタッフと生成AIがサポートします。週1日からの通所も相談でき、工賃については見学時にご案内します。
障害者手帳のデメリットについてよくある質問
Q. 障害者手帳を取ると、勤務先に自動で知られてしまいますか?
A. 手帳を持つことと、勤務先が障害を把握することは別の話です。厚生労働省のガイドラインでは、会社が障害を確認するときは本人の申告や同意を前提とし、申告や手帳の取得を強要してはいけないとされています。ただし、年末調整で障害者控除を受ける場合は、勤務先に出す申告書に手帳の種類や等級を書く欄があります。
Q. 精神障害者保健福祉手帳を持つと、運転免許は取り消されますか?
A. 運転免許の判断は、手帳の有無ではなく、一定の病気の症状や運転への影響で行われるしくみです。警察庁の資料には、手帳の有無を基準にする記載はありません。運転に不安があるときは、各都道府県警察の運転適性相談窓口に相談してください。
Q. 障害者手帳は、いらなくなったら返せますか?
A. 精神障害者保健福祉手帳は、障害が軽くなれば返すことや、更新しないこともできると、こころの情報サイトで説明されています。手続きの方法は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認してください。
Q. 障害者手帳の更新を忘れると、何か困ることはありますか?
A. 精神障害者保健福祉手帳は、有効期限が過ぎたあとでも更新の申請はできると厚生労働省の実施要領に定められていますが、期限切れの間の取り扱いは自治体によって異なります。手帳を使う予定があるときは、気づいた時点で市区町村の窓口に相談してください。期限の管理や更新の流れは「障害者手帳の更新手続き」で解説しています。
Q. 障害者手帳を取るか迷っていても、B型の見学やLINE相談はできますか?
A. できます。就労継続支援B型などの障害福祉サービスは、精神障害があれば手帳の有無にかかわらず受けられると説明されています。利用には市区町村の支給決定(受給者証)の手続きが必要です。ぽちぽちの道でも、手帳を持っていない段階や迷っている段階での見学・LINE相談を受け付けています。
まとめ
精神障害者保健福祉手帳については、持つことで不利益が生じることはないと説明されています(こころの情報サイト)。それでも、更新の手間や、使うときに提示が要ること、年末調整などで勤務先に書類を出す場面があることは知っておくと安心です。運転免許の判断は手帳ではなく病気の症状で行われ、手帳は不要になれば返すこともできます。
手帳のことを考えながら、日中の過ごし方も気になり始めたら、見学やLINEでの相談から始められます。質問だけでも大丈夫です。制度をまとめて確認したい方は「B型事業所の選び方チェックリスト」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
- 見学だけでもOK
- その場で決めなくてOK
- ご家族・支援者と参加OK
何かを始めたい、新しい一歩を踏み出したい方へ
まずは、見学・相談から
始めてみませんか?

監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

