「ADHDやASDでも障害年金の対象になるの?」「発達障害の障害年金は難しいと聞いて、請求をためらっている」という方へ。この記事では、障害認定基準が発達障害をどう見ているか、初診日が20歳の前か後かで何が変わるか、難しいと言われる理由と書類の準備を、日本年金機構の資料をもとに整理します。
発達障害も障害年金の対象に含まれ、請求できるかは初診日と日常生活の状態で判断されます
発達障害は、障害年金の対象になる精神の障害の区分のひとつです。ただし、診断を受けていれば受け取れるわけではなく、初診日の要件、障害の状態、保険料の納付要件をもとに個別に審査されます。
まず押さえておきたい結論は、次の3つです。
- 発達障害は認定基準に区分がある:日本年金機構が公開している障害認定基準の「精神の障害」の節に、発達障害の項目があります
- 見られるのは日常生活の制限:知能指数が高くても、社会性やコミュニケーションの障害で日常生活に著しい制限を受けているかに着目して認定されます
- 初診日で制度が変わる:20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、保険料の納付要件がない代わりに所得制限があり、知的障害を伴わない方が20歳以降に初めて受診した場合は、その受診日が初診日になります
実際に年金を受けられるかどうか、何級になるかは、この記事では判断できません。個別のケースは、年金事務所や社会保険労務士に相談してください。精神の障害の障害年金の全体像は「精神障害の障害年金」で紹介しています。
障害認定基準では、発達障害をどう見ている?
障害年金とは、病気やけがで生活や仕事などが制限されるようになったときに、現役世代の人も受け取れる可能性がある公的年金です。日本年金機構「障害年金」では、初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は障害基礎年金、厚生年金に加入していた場合は障害厚生年金を請求できると説明されています。
障害認定基準でいう発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、症状が通常低年齢で現れるもののことです。日本年金機構が公開している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の第8節(精神の障害)に、この定義があります。認定基準の用語は「注意欠陥多動性障害」で、「ADHD」「ASD」という病名ごとの基準は書かれていません。
等級ごとの例示(認定基準の一部例示)
認定基準は、発達障害で各等級に相当するものを次のように一部例示しています。あくまで例示で、「この状態なら何級」と決まる表ではありません。
| 等級 | 認定基準に示されている例(要約) |
|---|---|
| 1級 | 社会性やコミュニケーション能力が欠如し、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
| 2級 | 社会性やコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
| 3級 | 社会性やコミュニケーション能力が不十分で、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
3級は障害厚生年金だけにある等級で、障害基礎年金は1級と2級です。障害年金の等級は障害者手帳とは別の基準で判断されるため、手帳の等級と一致するとは限りません(「障害者手帳と障害年金の関係」)。発達障害と手帳の関係は「ADHD・発達障害で障害者手帳はもらえる?」で整理しています。
認定基準の発達障害の項では、就労支援施設に通う人も一般就労している人も、援助や配慮のもとで働いているとして、働いていることだけで日常生活能力が向上したとは捉えないとしています。「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日実施)でも、就労継続支援B型などでの就労は「1級または2級の可能性を検討する」要素として例示されています。どちらも、診断書のほかの内容とあわせた総合評価の材料のひとつです。
初診日が20歳の前か後かで、請求できる年金が変わります
発達障害の障害年金では、初診日がいつかによって、対象になる年金と要件が変わります。初診日とは、障害の原因になった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことで、病院を変えた場合もいちばん初めに診療を受けた日が初診日になります。
認定基準では、発達障害は通常低年齢で発症するとしたうえで、知的障害を伴わない人が発達障害の症状で初めて受診した日が20歳以降であれば、その受診日を初診日とすると定めています。子どもの頃に同じ症状で受診した記録がある場合の扱いは、年金事務所や社会保険労務士に確認してください。
| 初診日 | 主な対象 | 保険料の納付要件 | 所得による制限 |
|---|---|---|---|
| 20歳前(年金制度に加入していない期間) | 障害基礎年金(1級・2級)。支給は20歳から | なし | あり(本人の前年の所得額) |
| 国民年金に加入中 | 障害基礎年金(1級・2級) | あり | 20歳前傷病の所得制限の対象外 |
| 厚生年金に加入中(会社員など) | 障害厚生年金(1〜3級)。1級・2級は障害基礎年金もあわせて | あり | 20歳前傷病の所得制限の対象外 |
保険料の納付要件は、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料を納めた期間と免除された期間をあわせて3分の2以上あることです。初診日が令和18年3月末日までにあり、初診日に65歳未満であれば、初診日の前日において初診日がある月の前々月までの直近1年間に未納がないことでもよいとされています(日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」2026年4月1日更新)。
障害の程度を認定する障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を過ぎた日です。20歳前に初診日がある場合は、障害認定日以後に20歳になったときは20歳に達した日に、障害認定日が20歳より後のときは障害認定日に、1級または2級に当てはまるかを見ます。要件全体は「障害年金がもらえる条件」で整理しています。
20歳前傷病の障害基礎年金には所得制限があります(令和8年度)
20歳前に初診日がある障害基礎年金は、年金の加入を要件としていないため、本人の前年の所得による支給制限があります。日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(2026年4月1日更新)の基準は次のとおりです(扶養親族がいない場合)。
| 前年の所得額 | 支給 |
|---|---|
| 3,761,000円以下 | 全額支給 |
| 3,761,000円を超え4,794,000円以下 | 2分の1が支給停止 |
| 4,794,000円を超える | 全額が支給停止 |
扶養親族がいる場合は所得制限額が加算され、支給停止となる期間は10月から翌年9月までです。基準は「所得額」で給与の年収とは違うため、自分がどこに当たるかは年金事務所で確認してください。年金額(令和8年4月分から)は「障害年金の金額」で紹介しています。
発達障害の障害年金が難しいと言われる3つの理由
発達障害の障害年金が難しいと言われる背景には、一次情報で確認できる範囲では、初診日の証明、日常生活の困りごとの伝え方、総合的な認定という3つの要因があります。どれも「発達障害だから通りにくい」という決まりではなく、準備の段階でつまずきやすい点です。
理由1:子どもの頃の初診日を証明する書類がそろいにくい
初診日は、原則として初診時の医療機関の証明(受診状況等証明書)で確認されます。子どもの頃に初めて受診した場合、長い年月がたっていて医療機関が閉院していたり、記録が残っていなかったりすることがあります。
日本年金機構の「障害年金ガイド 令和8年度版」では、初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、初診日を合理的に推定できる一定の書類により、本人が申し立てた日が初診日と認められる場合があると案内されています。「病歴・就労状況等申立書を提出するとき」に掲載されている記載要領には、次の扱いも書かれています。
- 隣人、友人、民生委員などの第三者が初診日の頃の受診状況を証明できる場合は、第三者証明と参考資料で確認する(原則として複数の第三者による証明が必要)
- 20歳前に初診日がある方は、2番目以降に受診した医療機関の受診日が18歳6か月より前であることなどの条件を満たし、その受診日より前に厚生年金の加入期間がなければ、初診日を具体的に特定しなくても、審査の上で本人の申し立てた初診日が認められる
どの書類で初診日を確認できるかは個別の判断になるため、書類を集め始める前に年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
理由2:日常生活の困りごとが書類で伝わりにくい
発達障害の困りごとは、対人関係、段取り、金銭管理、生活リズムなど日常のさまざまな場面に出るため、診察の短い時間では医師に伝えきれないことがあります。日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」では、年金請求書、医師の診断書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書などが必要書類として案内され、20歳前障害の場合は本人の所得証明書(マイナンバーの記入で省略できる場合あり)も挙げられています。
病歴・就労状況等申立書の記載要領では、発病から現在までの状況を期間をあけずに記入し、1つの期間が5年を超える場合は3〜5年ごとに区切ること、日常生活で本人がどのくらい不自由さを感じているかを記入すること(主治医に確認する必要はない)と案内されています。子どもの頃からの経過が長い発達障害では、この申立書をまとめる作業が負担になりやすく、代筆した場合は代筆者の氏名や続柄を書く欄もあります。困りごとを日頃からメモに残し、診察のときに主治医へ伝えておくと、準備が進めやすくなります。
理由3:知能指数や働いているかどうかだけでは決まらない
認定基準は、たとえ知能指数が高くても、社会行動やコミュニケーション能力の障害で日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定するとしています。等級は診断名や一つの数値で決まるわけではなく、ガイドラインでは診断書の記載をもとに障害認定診査医員が総合的に判定するとされています。「一般就労しているから対象外」「B型に通っているから大丈夫」といった単純な見方ができないため、見通しが立てにくいと感じる方もいます。
請求の前に確認したいポイント
発達障害の障害年金を考え始めたら、次の点を確認しておくと、相談のときに話が進みやすくなります。
- 発達障害の症状で初めて医療機関を受診した日はいつか(子どもの頃の受診歴があるか)
- 初診日は20歳前の未加入期間か、国民年金か厚生年金の加入中か
- 初診時の医療機関は今もあるか、受診状況等証明書を依頼できるか
- 母子健康手帳や学校の記録など、子どもの頃の経過がわかるものが手元にあるか
- 日常生活で困っていること(対人関係、家事、金銭管理、通院など)を書き出しているか
請求の手順と社労士に頼む目安は「障害年金の申請を自分でする方法」、働きながら受けるときの考え方は「障害年金とB型は両立できる?」で紹介しています。障害年金を受けられるかどうか、どの等級になりそうかの個別の判断は、年金事務所、社会保険労務士、主治医に相談してください。
志木市の場合(年金の相談窓口)
志木市にお住まいの方は、障害基礎年金の請求や相談は市役所の保険年金課、障害厚生年金の請求は年金事務所が入口です。社会保険労務士に相談できる日も、市役所で設けられています。
- 保険年金課 国民年金グループ:志木市「保険年金課」の国民年金グループ(電話048-456-5360)の業務に、国民年金受給権者の裁定請求と国民年金等の相談が挙げられています
- 社会保険労務士による年金相談:志木市「志木市での年金相談」(2023年11月30日更新)では、市役所保険年金課の相談室で、毎週木曜日(祝日を除く)の午後1時から5時まで予約制で行われています。障害年金の初回相談は通常2時間で、障害年金の相談は電話で予約するよう案内されています
- 年金事務所:日本年金機構「埼玉県内の年金事務所管轄区域」では、志木市は川越年金事務所の管轄です
所在地は埼玉県志木市中宗岡1丁目1番1号で、障害者手帳の窓口は福祉部 共生社会推進課(障がい者福祉グループ 048-473-1449)です。相談日や予約方法は変わることがあるため、事前に確認してください。朝霞市・新座市・富士見市・和光市など近隣の方は、各市の公式サイトで担当窓口を確認してください。
ぽちぽちの道の場合
発達障害の特性と向き合いながら、「年金の請求と並行して、日中の過ごし方や働き方も考えたい」という方もいます。ぽちぽちの道はB型事業所で、監修のサービス管理責任者も年金の専門家ではありません。年金の個別判断は年金事務所・社会保険労務士へ相談していただき、ぽちぽちの道ではB型の利用についての相談をお受けしています。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化したB型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに実際の通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、スタッフと生成AIがサポートします。特性とパソコン作業の相性は「ADHDの方がB型のパソコン作業で力を発揮するには」や「障害・特性別にみるB型の利用ガイド」で紹介しています。
体調に合わせて週1日からの通所も相談でき、工賃は見学時にご案内します。工賃と年金を組み合わせた暮らし方は「工賃と障害年金だけで生活できる?」、B型を使うときに必要な受給者証は「受給者証とは?」で整理しています。
発達障害と障害年金についてよくある質問
Q. ADHDやASDと診断されていれば、障害年金の等級は診断名で決まりますか?
A. 診断名だけで等級が決まることはありません。障害認定基準は発達障害を一つの区分として扱い、社会性やコミュニケーション能力の障害で日常生活にどの程度の制限があるかに着目して認定するとしています。等級は診断書などをもとに総合的に判定されるため、見通しは主治医や社会保険労務士に相談してください。
Q. 大人になってから発達障害と診断された場合、障害年金の初診日はいつになりますか?
A. 知的障害を伴わない方が、発達障害の症状で初めて受診した日が20歳以降であれば、その受診日が初診日になると認定基準に定められています。その場合は、初診日に加入していた年金制度と保険料の納付要件で判断されます。子どもの頃に同じ症状で受診していた記録があるときは、年金事務所で扱いを確認してください。
Q. 発達障害の障害年金で、子どもの頃の初診日を証明する書類がそろわないときの方法はありますか?
A. 初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、初診日を合理的に推定できる一定の書類により、本人が申し立てた日が初診日と認められる場合があると日本年金機構は案内しています。20歳前に初診日がある方には、2番目以降に受診した医療機関の証明を使う簡素化の扱いもあります。使える書類は人によって違うため、早めに年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
Q. 知能指数が高いと、発達障害で障害年金の対象にはならないのですか?
A. 知能指数が高いことだけで対象外になるわけではありません。障害認定基準は、発達障害について、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害で日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定するとしています。実際の等級は日常生活の状況などから総合的に判定されます。
Q. 子どもの頃に初診日がある発達障害の場合、障害年金は何歳から受け取れますか?
A. 20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金は、支給が20歳からです。障害認定日以後に20歳になったときは20歳に達した日に、障害認定日が20歳より後のときは障害認定日に、1級または2級に当てはまるかが見られます。障害認定日は原則として初診日から1年6か月を過ぎた日で、所得による支給制限もあるため、請求の時期は年金事務所や市区町村の国民年金の窓口で確認してください。
まとめ
発達障害は障害年金の対象になる精神の障害の区分に含まれますが、受けられるかどうかは、初診日、保険料の納付要件、日常生活の制限の程度をもとに個別に審査されます。難しいと言われる背景には、子どもの頃の初診日の証明や、困りごとを書類で伝える準備の負担があるため、早めに年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
年金のことと並行して、日中の過ごし方や自分に合う作業を考えたくなったら、ぽちぽちの道の作業内容をのぞいてみてください。見学やLINEでの相談は、質問だけでも大丈夫です。障害年金の全体像は「精神障害の障害年金」、お金と制度をまとめて確認したい方は「障害のある方のお金と制度まとめ」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

