うつ病で通院や療養を続けていて、「うつ病でも障害年金の対象になるの?」「難しいと聞いたけれど本当?」と迷っている方に向けた記事です。うつ病と障害年金の関係を、日本年金機構が公開している障害認定基準と等級判定ガイドラインから整理し、「難しい」と言われる理由を公式の資料で説明できる範囲でまとめます。障害者手帳は別の制度で、手帳については「うつ病・適応障害で障害者手帳はもらえる?」で紹介しています。
うつ病で障害年金はもらえる?病名ではなく、生活への影響と要件で判断されます
うつ病でも、障害年金の対象になる可能性はあります。障害認定基準では、精神の障害の程度は原因、症状、治療とその経過、具体的な日常生活の状況などから総合的に認定するとされ、病名だけで決まるしくみではありません。実際に受けられるかは、初診日・障害の状態・保険料の納付という要件と、個別の審査で決まります。
まず押さえておきたいのは、次の3点です。
- うつ病は「気分(感情)障害」の区分にあたる病気:障害認定基準の精神の障害は6つの区分に分かれています。厚生労働省の「疾病、傷害及び死因の統計分類」(ICD-10(2013年版)準拠)では、うつ病エピソードは気分[感情]障害に分類されていて、認定基準にもこの区分名で書かれています。認定基準に個別の病名は出てこないため、どの区分で見られるかは主治医や年金事務所に確認してください
- 症状の波や経過も考慮される:そのときの症状だけで認定するのは不十分とされ、症状の経過と日常生活の状態を十分考慮すると書かれています
- 「うつ病なら何級」とは決まっていない:等級は、診断書の内容や就労状況などをあわせた総合評価で判定されます
受けられるかどうか、どの等級になりそうかは、この記事では判断できません。個別のことは年金事務所、社会保険労務士、主治医に相談してください。精神の障害年金全体の流れは「精神障害の障害年金」で整理しています。
うつ病の障害者手帳と障害年金は、基準も時期も違います
「手帳が3級だから年金も3級」とはなりません。精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、根拠になる法律も、等級を判断する基準も別々です。
| 項目 | 精神障害者保健福祉手帳 | 障害年金 |
|---|---|---|
| 判断の基準 | 厚生労働省の手帳の判定基準 | 障害等級表と障害認定基準(精神は等級判定ガイドラインも) |
| 手続きの時期 | 初診日から6か月を過ぎてからの診断書で申請 | 原則として初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)以後に請求 |
| 等級 | 1〜3級 | 障害基礎年金は1・2級、障害厚生年金は1〜3級 |
手帳と年金の関係は「障害者手帳と障害年金の関係」でくわしく比べています。
障害認定基準では、うつ病(気分(感情)障害)はどう書かれている?
障害認定基準とは、障害年金の等級を判断するために国が定め、日本年金機構が公開している基準のことです。精神の障害は「第8節」にまとめられ、ICD-10でうつ病が分類される気分(感情)障害にも等級ごとの例示があります。
日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第8節 精神の障害」には「うつ病」という病名そのものは書かれておらず、「気分(感情)障害」という区分の名前で説明されています。
| 等級 | 気分(感情)障害の例示(一部を短くまとめたもの) |
|---|---|
| 1級 | 高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、持続したりひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの |
| 2級 | 気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、持続したりひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
| 3級(厚生年金のみ) | 同じく病相期があり、病状は著しくないが、持続したり繰り返したりして、労働が制限を受けるもの |
この表は認定基準が「一部例示」として示しているもので、当てはまるかどうかだけで等級が決まるわけではありません。
症状の波がある病気として、経過が見られます
認定基準は、気分(感情)障害を「症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すもの」と説明しています。そのため、診断書に書かれた時点の症状(現症)だけで認定するのは不十分とし、症状の経過と、それによる日常生活活動などの状態を十分考慮するとしています。
働いていても、それだけで判断されるわけではありません
認定基準は、仕事をしている人について、働いていることをもって直ちに日常生活能力が向上したとは捉えないとしています。仕事の種類や内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、ほかの従業員との意思疎通の状況などを十分確認して判断します。働き方と年金の関係は「障害年金とB型は両立できる?」でも紹介しています。
適応障害など「神経症」にあたる場合の書かれ方
認定基準では、神経症は症状が長く続き一見重症であっても、原則として認定の対象とならないとされています。ただし、臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものは、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱い、その病態がICD-10のどの区分に属するかを考慮して判断するとされています。
「適応障害」などの個別の病名は認定基準に出てこないため、この記事では対象外とも対象とも言い切れません。診断名の扱いは、主治医と年金事務所や社会保険労務士に確認してください。
等級判定ガイドラインでは、診断書の評価と就労状況をあわせて見ます
精神の障害の等級は、ガイドラインの「目安」を参考にしつつ、生活や就労の状況を考慮した総合評価で判定されます。目安の表だけで等級が決まるわけではありません。
日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」によると、精神障害と知的障害の認定に地域による傾向の違いが確認されたため、厚生労働省がガイドラインを策定し、平成28年9月1日から実施しています。ガイドライン本文の主な考え方は次のとおりです。
- 目安の表:診断書の「日常生活能力の判定」の平均と「日常生活能力の程度」を組み合わせて、どの等級に相当するかの目安を示す。障害基礎年金では表の「3級」を「2級非該当」と読み替える
- 総合評価:現在の病状、療養状況、生活環境、就労状況なども考慮して認定医が判定し、目安と異なる等級になることもあり得る
- 就労状況の見方:援助や配慮がない場合に予想される状態も考慮する。就労継続支援A型・B型や障害者雇用制度による就労は「1級または2級の可能性を検討する」と例示されている
3つめは、B型に通っていると1級か2級になるという意味ではなく、検討の要素の一つとして例示されているという範囲で受け止めてください。
うつ病の障害年金が「難しい」と言われるのはなぜ?公式の資料から分かる要因
「うつ病の障害年金は難しい」と言われる背景には、症状に波がある病気であることや、初診日と保険料の要件を書類で確かめる必要があることなど、制度のしくみによる要因があります。通りやすさの割合を示した公式の資料は確認できなかったため、ここでは資料に書かれている要因だけを挙げます。
| 要因 | 公式の資料での書かれ方 |
|---|---|
| 症状に波がある | 現症のみで認定するのは不十分で、症状の経過と日常生活の状態を十分考慮する(障害認定基準) |
| 初診日を書類で確かめる | 初診時の医療機関と診断書を書いた医療機関が違う場合、初診日の確認のため受診状況等証明書が必要 |
| 保険料の納付要件がある | 初診日の前日の時点で、納付済期間と免除期間が3分の2以上などの要件を見る |
| 障害基礎年金には3級がない | 障害基礎年金は1級・2級のみで、3級は厚生年金保険のみ |
| 働いている状況も確認される | 仕事の内容や受けている援助などを確認して日常生活能力を判断する(障害認定基準) |
受診状況等証明書は、日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」の添付書類に挙げられています。初診日とは、障害の原因となった病気で初めて医師等の診療を受けた日のことで、転院した場合は一番初めに受診した日です。日本年金機構の「障害年金ガイド 令和8年度版」は、初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、一定の書類により本人が申し立てた日が初診日と認められる場合があると案内しています。
うつ病で障害年金を請求するときの受給要件と時期
うつ病でも要件は他の病気と同じで、請求できる時期は原則として初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)以後です。
日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」(2026年4月1日更新)では、初診日の要件、障害の状態の要件、保険料の納付要件の3つをすべて満たすことが障害基礎年金の条件とされています。3つの要件の中身は「障害年金がもらえる条件」で整理しています。
うつ病で通院を続けるなかで、引っ越しや通いやすさなどの理由で病院を変える方もいます。初診日は、同じ病気で転院していても一番初めに医師等の診療を受けた日なので、今通っている病院ではなく最初の医療機関が基準になります。初診時の医療機関と診断書を書く医療機関が違うときは受診状況等証明書が必要になるため、請求を考え始めた段階で、これまでに受診した医療機関と時期を順番に書き出しておくと確認しやすくなります。
障害認定日に障害の状態にあれば「障害認定日による請求」ができ、さかのぼって受け取れる年金は時効により5年分が限度です。そのときは該当しなくても、後に重くなったときは65歳の誕生日の前々日までに「事後重症による請求」ができ、請求日の翌月分からの支給になります。
令和8年4月分からの障害基礎年金の額は、昭和31年4月2日以後生まれの方で1級が年1,059,125円、2級が年847,300円です(子の加算額は別)。生年月日による違いや障害厚生年金のしくみは「障害年金の金額」で紹介しています。
うつ病で障害年金を考えるときに確認したいポイント
相談の前に、初診日、保険料、日常生活で困っていることを書き出しておくと、年金事務所や社会保険労務士、主治医との話が進めやすくなります。
- うつ病の症状で初めて受診した日はいつか、今の病院より前に同じ症状で受診した医療機関はないか
- 初診日に加入していた年金制度は、国民年金か厚生年金か
- 初診日の前日の時点で、保険料の未納がなかったか(年金事務所で確認できる)
- 調子の悪い時期を含めて、食事、通院、人づきあい、手続きなどで困っている場面を主治医に伝えられるか
- 働いている、B型に通っている場合は、仕事の内容や受けている配慮を説明できるか
自分で請求するときの書類と流れは「障害年金の申請を自分でする方法」で紹介しています。ぽちぽちの道の監修者はサービス管理責任者で、年金の専門家ではありません。年金の個別判断は、年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
志木市の場合(年金の相談窓口)
志木市にお住まいの方は、国民年金(障害基礎年金を含む)の相談は保険年金課、障害厚生年金の請求は年金事務所が入口です。市役所では、社会保険労務士による年金相談も行われています。
- 保険年金課 国民年金グループ:志木市「保険年金課」(電話048-456-5360)の業務に、国民年金受給権者の裁定請求と国民年金等の相談が挙げられています
- 社会保険労務士による年金相談:志木市「志木市での年金相談」(2023年11月30日更新)では、市役所保険年金課の相談室で、毎週木曜日(祝日を除く)の午後1時から5時まで予約制で相談を受けると案内されています。障害年金の初回相談は通常2時間で、障害年金の相談は電話で予約するよう書かれています
- 年金事務所:日本年金機構「埼玉県内の年金事務所管轄区域」では、志木市は川越年金事務所の管轄です
所在地は埼玉県志木市中宗岡1丁目1番1号です。年金相談のページは更新日が古いため、実施日や予約方法は事前に電話で確認してください。障害者手帳の窓口は福祉部 共生社会推進課で、年金とは課が分かれています。朝霞市・新座市・富士見市・和光市など近隣の方は、各市の公式サイトで担当窓口を確認してください。
ぽちぽちの道の場合
うつ病で療養していると、年金の手続きと同じくらい「工賃と年金でどう暮らすか」「日中をどう過ごすか」が気になる方もいます。ぽちぽちの道では、障害年金の受給の見込みや等級を判断することはできませんが、B型の利用を考えるときの相談はお受けしています。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化したB型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに駅からの通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きなどに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しています。体調に波がある方もいるため、週1日からの通所も相談でき、工賃は見学時にご案内します。
収入の考え方は「工賃と障害年金だけで生活できる?」、うつ病のある方の通い方は「うつ病でもB型に通える?」、作業を少しずつ再開する順番は「うつの回復期の働き方」で紹介しています。「年金の請求はこれから」という段階でも、見学やLINEでの相談を受け付けています。
うつ病と障害年金についてよくある質問
Q. うつ病で障害年金を請求できるのは、通院を始めてからどのくらい後ですか?
A. 原則として、初診日から1年6か月を過ぎた日(障害認定日)以後です。障害認定日に該当しなかった場合も、その後に重くなれば事後重症による請求ができます。自分の場合の時期は、年金事務所や社会保険労務士に確認してください。
Q. うつ病の症状に波があると、障害年金の審査ではどう見られますか?
A. 障害認定基準では、気分(感情)障害はそのときの症状だけで認定するのは不十分とされ、症状の経過と日常生活の状態を十分考慮すると書かれています。調子の悪い時期を含めた生活の様子を、主治医に伝えておくことが大切です。
Q. 適応障害と診断されている場合、障害年金の対象になりますか?
A. 認定基準に「適応障害」という病名は出てこないため、一律には言えません。認定基準は神経症を原則として対象外としつつ、精神病の病態を示すものは気分(感情)障害などに準じて扱うとしています。診断名の扱いは、主治医と年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
Q. うつ病で調子の良い時期に働いていたことがあると、障害年金の審査で不利になりますか?
A. 障害認定基準では、仕事をしている人について、働いていることをもって直ちに日常生活能力が向上したとは捉えないとされています。気分(感情)障害は症状の経過を十分考慮するとされ、仕事の内容や就労状況、受けていた援助なども確認して判断されます。働けていた時期と調子を崩した時期の様子を、あわせて主治医に伝えておくと説明しやすくなります。
Q. うつ病で最初に内科や心療内科を受診していた場合、どこを初診日として確認すればいいですか?
A. 初診日は、障害の原因となった病気で初めて医師等の診療を受けた日で、転院した場合は一番初めに受診した日とされています。内科などでの受診がうつ病の初診にあたるかは個別の確認が必要なため、受診した医療機関と時期を書き出して、年金事務所に相談してください。
まとめ
うつ病で障害年金を受けられるかは、病名ではなく、初診日・障害の状態・保険料の納付の要件と、症状の経過や日常生活、就労状況をあわせた総合評価で判断されます。「難しい」と言われる理由には症状の波や初診日の証明など制度上の要因があり、見込みは年金事務所、社会保険労務士、主治医に確認してください。
年金のことと並んで、日中の過ごし方やB型の利用が気になったら、LINEでの相談や見学から始められます。質問だけでも大丈夫です。お金と制度をまとめて確認したい方は「障害のある方のお金と制度まとめ」、B型を使うための手続きは「受給者証とは?」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

