「働いて収入が増えると、障害年金が止まるのでは」と心配している本人やご家族へ。障害年金の所得制限は、すべての障害年金にあるわけではなく、20歳前に初診日がある障害基礎年金に設けられたしくみです。この記事では、令和8年度の基準額、止まる期間、年収と所得の違い、B型の工賃やアルバイトとの関係を、日本年金機構と国税庁の情報をもとに整理します。
障害年金の所得制限は、20歳前に初診日がある障害基礎年金だけのしくみです
障害年金で本人の所得によって支給が止まることがあるのは、原則として「20歳前の傷病による障害基礎年金」です。障害厚生年金や、国民年金に加入している間に初診日がある障害基礎年金には、本人の所得で支給を止める規定はありません。
20歳前の傷病による障害基礎年金とは、20歳前の、年金制度に加入していない期間に初診日がある障害基礎年金のことです。保険料を納めていない時期の障害を対象にしているため、保険料の納付要件がない代わりに、所得などによる制限が設けられています。日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(2026年4月1日更新)は、年金の加入を要件としていないことから、支給に制限や調整があると説明しています。
まず押さえておきたいのは、次の3点です。
- 対象は20歳前傷病の障害基礎年金:生まれつきの障害や、10代で初めて受診した知的障害・発達障害・精神障害などで受けている障害基礎年金が当てはまることが多い
- 見られるのは本人の前年の所得:扶養親族の数によって基準額が変わり、親など家族の所得は基準の対象ではない
- 「年収」ではなく「所得」で判定:給与なら給与所得控除を差し引いた後の額で、障害年金そのものは計算に入らない
| 年金の種類 | 初診日の時期 | 本人の所得による支給停止 |
|---|---|---|
| 20歳前傷病の障害基礎年金 | 20歳前で、年金制度に加入していない期間 | あり(前年の所得で判定) |
| 障害基礎年金(上記以外) | 国民年金に加入している期間など | 規定なし |
| 障害厚生年金 | 厚生年金に加入している期間(会社員など) | 規定なし |
所得による支給停止は、国民年金法第36条の3で、第30条の4による障害基礎年金(20歳前傷病の障害基礎年金)について定められています。障害基礎年金と障害厚生年金の違いは「障害基礎年金と障害厚生年金の違い」、受給の要件全体は「障害年金がもらえる条件」で整理しています。20歳前でも、会社に勤めて厚生年金に加入していた間に初診日がある場合などは扱いが変わることがあるため、自分の年金がどれに当たるかは年金事務所で確認してください。
所得制限の基準額は2段階で、扶養親族がいると加算されます(令和8年度)
所得制限は、前年の所得が3,761,000円を超えると年金額の2分の1が、4,794,000円を超えると全額が支給停止になる2段階のしくみです(扶養親族がいない場合)。日本年金機構の同じページで、昭和31年4月2日以後生まれの方の支給額は次のように示されています。
| 前年の本人の所得額(扶養親族なし) | 1級の支給額(年額) | 2級の支給額(年額) |
|---|---|---|
| 3,761,000円以下(全額支給) | 1,059,125円 | 847,300円 |
| 3,761,001円から4,794,000円(2分の1停止) | 529,563円 | 423,650円 |
| 4,794,000円を超える(全額停止) | 0円 | 0円 |
昭和31年4月1日以前生まれの方は、全額支給の額が1級1,056,125円、2級844,900円です。等級ごとの年金額や子の加算は「障害年金の金額」で紹介しています。
扶養親族がいると、1人につき38万円などが加算されます
扶養親族がいる場合は、扶養親族1人につき所得制限額が38万円加算されます。対象の扶養親族が老人控除対象配偶者または老人扶養親族なら1人につき48万円、特定扶養親族または19歳未満の控除対象扶養親族なら1人につき63万円です。
たとえば、一般の扶養親族が1人いる場合は、2分の1停止の基準が4,141,000円、全額停止の基準が5,174,000円になります(3,761,000円と4,794,000円に38万円を足した記事側の計算)。ここでいう扶養親族は所得税法上の考え方にもとづくもので、年金を受けている本人が家族を扶養している場合に加算されます。
支給が止まる期間は、10月分から翌年9月分までです
所得制限の判定は毎年行われ、前年の所得にもとづく支給対象期間は「10月分から翌年9月分まで」です。たとえば、2025年(令和7年)の所得は、2026年10月分から2027年9月分までの支給に関係します。
働き始めた年の所得が、その年のうちにすぐ年金に反映されるわけではありません。翌年の10月分から影響する可能性がある、という時間差を知っておくと、家計の見通しを立てやすくなります。前年の所得が基準以下に戻れば、その年の10月分からは所得による停止の対象外になります。なお、災害で住宅や家財のおおむね2分の1以上の損害を受けた場合の特例も、国民年金法第36条の4に定められています。
「所得」は年収ではなく、控除を差し引いた後の額です
所得制限の「所得」とは、収入から給与所得控除や必要経費などを差し引いた後の金額のことです。給与の「年収」と同じではないため、年収が376万円を超えたからといって、すぐに年金が減るわけではありません。
国民年金法施行令第6条・第6条の2では、この所得を住民税(道府県民税)の非課税所得以外の所得とし、住民税の総所得金額などをもとに計算すると定めています。さらに、社会保険料控除、医療費控除、雑損控除などを受けている場合はその額を差し引き、扶養している家族の障害者控除などは定められた額を差し引きます。一方で、本人自身の障害者控除は差し引く対象に含まれていません。
| 収入の種類 | 所得の考え方 | 所得制限の計算 |
|---|---|---|
| アルバイト・会社の給与 | 給与収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」 | 含まれる |
| B型の工賃 | 給与とは扱いが異なり、雑所得などとして扱われることがある(個別の事情による) | 所得として扱われる場合は含まれる |
| 障害年金 | 国民年金法第25条で租税その他の公課を課せないとされ、非課税 | 含まれない |
障害年金が非課税であることは、日本年金機構のFAQ「障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか」でも案内されています。工賃の税金上の扱いは「B型の工賃は確定申告が必要?」で解説しています。
給与所得控除で、年収と所得の差を確認できます
給与所得は、給与収入から給与所得控除額を差し引いて求めます。国税庁「No.1410 給与所得控除」(令和8年4月1日現在法令等)の令和7年分の表は、次のとおりです。
| 給与等の収入金額(令和7年分) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 1,900,000円まで | 650,000円 |
| 1,900,001円から3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
| 3,600,001円から6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
| 6,600,001円から8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
給与収入だけの人は、この表で給与所得を出してから基準の額と比べます。社会保険料控除などを差し引くと所得はさらに小さくなるため、年収でいくらまで働けるかは人によって違います。見込みは年金事務所で確認してください。
国税庁の同じページでは、令和8年分からの給与所得控除額(2,200,000円までは740,000円など)も示されています。翌年以降の判定にどう影響するかは、年金事務所や市区町村の税務担当で確認してください。
B型に通いながら20歳前障害の障害基礎年金を受けている人の場合
B型の工賃だけで所得制限の基準に届くことは、少ないと考えられます。B型は雇用契約を結ばずに作業の対価として工賃を受け取るしくみで、2分の1停止の基準は扶養親族がいない場合でも所得3,761,000円です。工賃の平均額や給料との違いは「工賃とは?平均額と給料との違い」で紹介しています。
注意したいのは、B型とほかの収入を組み合わせたときです。所得は本人の1年間の合計で見るため、次のような場合は、前年の所得がどのくらいになりそうかを早めに把握しておくと安心です。
- B型に通いながら、アルバイトの給与も受け取っている
- 年の途中でB型から一般就労(就職)に移り、給与収入が増えた
- 工賃のほかに、事業所得や不動産所得など別の所得がある
- 家族を扶養していて、扶養親族の数が変わった
B型とアルバイトを併用するときのルールは「B型に通いながらバイトはできる?」で解説しています。年金を受けながらB型に通うこと全体については「障害年金とB型は両立できる?」、工賃と年金を合わせた暮らし方は「工賃と障害年金だけで生活できる?」にまとめています。
所得制限と、障害の状態の確認(更新)は別のしくみです。所得が基準以下でも、更新のときに障害の状態がどう判断されるかは、診断書などをもとに個別に決まります。「止まるかもしれない」と自己判断で通所や仕事をやめる前に、年金事務所や社会保険労務士に相談してください。
障害年金を受けると家族の扶養がどうなるかは「障害年金をもらうと扶養から外れる?」で整理しています。
所得の確認は、原則として届出なしで行われます
20歳前傷病の障害基礎年金は、毎年、本人の前年所得の確認が必要です。ただし、日本年金機構が市区町村から所得情報の提供を受けるため、以前は毎年提出していた所得状況届(ハガキ)は、原則として提出する必要がなくなりました。
日本年金機構「障害年金受給者が行う手続きの変更について」(2019年8月1日更新)では、令和元年7月以降の変更として、所得情報の提供を受けられないときはこれまでどおり所得状況届の提出が必要で、対象の方には案内を送ると説明しています。案内が届いたときは、期限までに提出してください。
所得のほかにも、20歳前傷病の障害基礎年金には次の制限や調整があります(日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」より)。
- 恩給や労災保険の年金などを受けているとき:その受給額について障害基礎年金の額が調整される。初めて受けるときは「国民年金受給権者 支給停止事由該当届」の提出が必要
- 海外に住んだとき:年金の全額が支給停止される
- 刑務所などの矯正施設に入所したとき:全額が支給停止される(有罪が確定していなければ停止にはならない)
志木市にお住まいの方は、国民年金(障害基礎年金を含む)の相談を市役所の保険年金課 国民年金グループ(048-456-5360)でも受け付けています。所得の額そのものは住民税の課税の内容にもとづくため、工賃やアルバイト収入の申告のしかたは、お住まいの市区町村の税務担当に確認してください。
ぽちぽちの道の場合
年金と工賃、アルバイトの収入をどう組み合わせるかは、将来の働き方を考えるときに多くの方が迷う点です。ぽちぽちの道では、所得制限に当たるかどうかや年金額を判断することはできません。監修のサービス管理責任者も年金や税の専門家ではないため、年金の個別判断は年金事務所・社会保険労務士に、所得の計算は市区町村の税務担当にご相談ください。そのうえで、B型の利用や通い方の相談はお受けしています。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、週1日からの通所も相談できます。工賃は見学時にご案内します。「年金を受けながら、少しずつパソコンのスキルを身につけたい」という段階でも、見学やLINEでの相談を受け付けています。
障害年金の所得制限についてよくある質問
親や家族の収入が多いと、20歳前障害の障害基礎年金は止まりますか?
所得制限で見られるのは、年金を受けている本人の前年の所得です。国民年金法第36条の3は「受給権者の前年の所得」で判定すると定めており、親や家族の所得は基準の対象ではありません。扶養親族の数は基準額の加算に関係するため、家族構成が変わったときは年金事務所に確認してください。
B型の工賃は、障害年金の所得制限の「所得」に入りますか?
工賃が所得として扱われる場合は、所得制限の計算に含まれます。工賃は給与とは扱いが異なり、雑所得などとして考えられることがありますが、実際の扱いは個別の事情によります。工賃だけで基準に届くことは少ないと考えられますが、ほかの収入と合わせたときは市区町村の税務担当に確認してください。
20歳前障害の障害基礎年金を受けながら、アルバイトでいくらまで働けますか?
基準は年収ではなく所得で、扶養親族がいない場合は所得3,761,000円を超えると年金の2分の1が止まります。給与収入から給与所得控除や社会保険料控除などを差し引いた額で比べるため、年収でいくらまで働けるかは人によって違います。自分の場合は年金事務所で確認してください。
所得制限で障害年金が止まるのは、いつからいつまでですか?
前年の所得にもとづき、10月分から翌年9月分までの支給が停止の対象になります。たとえば2025年の所得は、2026年10月分から2027年9月分までに関係します。翌年の所得が基準以下になれば、その年の10月分からは所得による停止の対象外です。
障害厚生年金にも所得制限はありますか?
本人の所得によって支給を止める規定は、20歳前の傷病による障害基礎年金についてのもので、障害厚生年金にはありません。国民年金に加入している間に初診日がある障害基礎年金も同じです。ただし、恩給や労災保険の年金など別の給付との調整はあるため、ほかの給付を受けるときは年金事務所に確認してください。
まとめ
障害年金の所得制限は、20歳前に初診日がある障害基礎年金だけのしくみで、令和8年度は前年の所得が3,761,000円を超えると2分の1、4,794,000円を超えると全額が、10月分から翌年9月分まで停止されます。判定は年収ではなく所得で、障害年金そのものは含まれず、B型の工賃だけで届くことは少ないと考えられます。アルバイトや就職で収入が増えるときは、年金事務所や市区町村の税務担当に早めに確認してください。
年金を受けながらの通い方や、パソコン作業に挑戦してみたい気持ちがあれば、LINEでの相談や見学から始められます。質問だけでも大丈夫です。障害年金のほかの制度もまとめて確認したい方は「障害のある人がもらえるお金・手当の一覧」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

