相談支援専門員や支援者として本人のB型の体験に同行するとき、何を見て、どう振り返るかをまとめました。パソコン作業や生成AIを使う作業に絞り、画面の負荷、手順の理解、AIの出力の確かめ方、質問のしかた、疲れ方、通所動線の6つを観察表にしています。就労選択支援との違いも整理しました。
B型の体験で見極めたいのは「向き不向き」より「どんな条件なら続けやすいか」です
B型の体験で支援者が見極めたいのは、パソコン作業に向いているかの結論ではなく、どんな条件なら無理なく続けられそうかという手がかりです。体験はその日の緊張や体調に左右されやすく、1回の出来で適性を決めると、慣れや環境の調整で変わる部分を見落とします。決めるのは本人で、支援者は観察した事実を本人と整理する役割を担います。
- 画面を見続ける負荷:どのくらいの時間で目や姿勢に疲れが出るか
- 手順の理解:入力の正確さより、説明を聞いて次の操作に進めるか
- AIの出力を確かめる姿勢:AIの答えをそのまま使わず、見直せるか
- 質問のしかた:困ったときに、どんな方法で助けを求められるか
- 疲れ方:作業の後半や、帰宅後・翌日にどんな変化があるか
- 通所動線:ひとりで無理なく行き来できる経路と時間帯か
紹介前に事業所側の条件を確かめる観点は「相談支援員の方へ|B型事業所を紹介するとき」にまとめています。この記事はその次の、体験の場で本人の様子をどう見るかを扱います。
体験利用と就労選択支援はどう違う?観察の目的を先にそろえます
B型事業所の体験利用は本人が作業や通い方との相性を確かめる場で、就労選択支援は就労に関する適性や意向を整理する障害福祉サービスです。どちらの場にいるのかを意識すると、見るポイントや記録のしかたがぶれにくくなります。
就労選択支援とは、就労移行支援や就労継続支援を使うか、一般の事業所に雇用されるかを本人が適切に選べるよう、短期間の生産活動などを通じて適性や意向、必要な配慮を整理する障害福祉サービスのことです。 定義は障害者総合支援法第5条第13項にあります。本人向けの体験の説明は「就労継続支援B型の体験利用とは?」をご覧ください。
| 項目 | B型事業所の体験利用 | 就労選択支援 |
|---|---|---|
| 何をする場か | 実際に作業を試し、通い方や作業との相性を確かめる | 短期間の生産活動などを通じて、適性や意向、必要な配慮を整理する |
| 期間の目安 | 事業所ごとに異なる | 支給決定期間は原則1か月。アセスメントは2週間程度(5日間程度も可) |
| 結果の扱い | 本人・事業所・支援者で振り返り、通い方を考える | 多機関のケース会議を経てアセスメント結果を作り、事業者などとの連絡調整に使う |
期間と流れは連名通知「特別支援学校等における就労選択支援の取扱いについて」(令和7年5月15日)によります。厚生労働省の「就労選択支援実施マニュアル」は、就労選択支援は就労の可否を判断したり、利用するサービスを振り分けたりするものではないと説明しています。
令和7年10月から、B型を新たに使う場合は原則として就労選択支援を先に利用します。50歳に達している人、障害基礎年金1級を受給している人などは例外で、近くに事業者がない場合は就労移行支援事業者などのアセスメントを経た利用も認められています。例外にあたるかは市区町村が判断するため、個別のケースはお住まいの窓口で確認してください。くわしくは「就労選択支援とは?」で解説しています。
PC・AI作業の体験で支援者が観察したい6つのポイント
PC・AI作業の体験では、できた量や入力の正確さより、どこで負荷がかかり、どんな工夫で楽になりそうかを観察すると振り返りの材料が集まります。就労選択支援実施マニュアルでも、模擬的な就労場面では周囲とのやり取りや、疲れてきたときの行動の変化などを通じてアセスメントできるとしています。
| 観点 | 体験中に見える様子の例 | 振り返りで本人に聞きたいこと | 読み違えやすい点 |
|---|---|---|---|
| 画面の負荷 | 目をこする、姿勢が崩れる | つらくなったのは始めてからどのくらいか | 初めての場所の緊張と区別しにくい |
| 手順の理解 | 次の操作に進めるか、メモを見返すか | どこで迷ったか | ミスの数だけでは慣れを見落とす |
| AIの出力の確かめ方 | そのまま貼るか、読み直すか | おかしいと感じた答えはあったか | AI自体が初めての人も多い |
| 質問のしかた | 声をかける、黙って止まる | どんな聞き方ならできそうか | 質問がない=分かっている、ではない |
| 疲れ方 | 後半の集中の変化 | 帰宅後や翌日の体調はどうだったか | 「楽しかった」と疲れは両立する |
| 通所動線 | 駅からの道順、到着時の様子 | ひとりで来られそうか | 付き添いの有無で負担が違う |
画面の負荷と疲れ方は、時間の経過と翌日まで見る
画面を見続ける負荷は、始めてからどのくらいで姿勢や表情が変わるかで見ます。当日は気が張って疲れを自覚しにくいため、帰宅後や翌日の様子まで確かめると、通う日数を考える手がかりになります。目の痛みや頭痛、体調不良が続くときは、主治医や医療機関への相談を勧めてください。休憩の工夫は「パソコン作業の疲れ対策」、本人の気持ちの整理は「体験利用で疲れ切ってしまった…向いていないサイン?」が参考になります。
入力の正確さより、手順の理解とAIの確かめ方を見る
初めての体験では、入力の速さや正確さは実力を表しにくいものです。説明を聞いて次の操作に進めるか、迷ったときにメモを見返せるかを見ると、続けたときの伸びしろが見えてきます。生成AIはもっともらしい誤りを出すことがあるため、答えを読み直すか、違和感を口にするかも大切な観察点です。確かめ方の基本は「AIの答えは間違うこともある」にあります。
質問のしかたと通所動線は、ひとりで通う日を想定して見る
困ったときに声をかけるか、黙って手が止まるかに良し悪しはなく、本人に合う助けの求め方があるかを見ておくと配慮を相談する材料になります。付き添いのある体験では、道順や混雑の負担が表に出にくくなります。ひとりで通う日を想定して話し合いましょう。電車が苦手な場合の工夫は「電車が苦手でも通える?」で紹介しています。
PC・AI作業の体験の様子を支援者の方と一緒に確かめたい場合は、ぽちぽちの道の見学・体験のご相談窓口からお知らせください。質問だけでも大丈夫です。
体験のあとの振り返りは「事実」と「見立て」を分けて、本人の言葉で進めます
体験後の振り返りでは、支援者が見た事実と、そこから考えた見立てを分けて伝えると、本人が自分で判断しやすくなります。就労選択支援実施マニュアルでも、結果の整理では客観的事実と支援員の見解を分けて書くこと、アセスメントは就労の可否の判断ではなく今後のプランを考えるためのものだと本人に伝えることが示されています。
- 当日の感想を聞く:「どの作業が一番やりやすかった?」など答えやすい問いから始める
- 翌日以降の体調を確かめる:疲れや睡眠の変化を本人の言葉で聞く
- 事実を場面で伝える:「手順メモを見返してから、ひとりで進めていた」のように行動で伝える
- 見立ては選択肢で出す:「短い時間から始めると楽かもしれない」と提案の形にする
- 次の一歩を本人が選ぶ:もう一度体験する、日数を変える、別の事業所も見学する、などから選ぶ
- [ ] 「向いていない」ではなく「どうすれば楽にできそうか」を一緒に考えている
- [ ] 本人の「楽しかった」と支援者が見た疲れを、どちらも否定していない
- [ ] 事業所へ伝える情報は、本人の同意を得た範囲にとどめている
取り組み方から強みを拾う視点は「本人の強みの見つけ方」でも紹介しています。志木市にお住まいの方がB型を新たに利用する場合の手続きは、市役所福祉部の共生社会推進課に確認してください。問い合わせ先は障がい者福祉グループ(048-473-1449)で、課のページ「共生社会推進課」に連絡先が載っています。所在地は志木市中宗岡1丁目1番1号です。
ぽちぽちの道の場合(PC・AI作業の体験を支援者と振り返るとき)
PC・AI作業の体験で本人がどんな様子だったかを、支援者の方と一緒に確かめたいというご相談も受け付けています。ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です。見学・体験を受け付けており、パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しています。
作業内容は、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章・調査・画像づくりなどが中心で、事業所内では生成AI(ぽちぽちAI)を業務の相棒として使っています。作業の種類は「ぽちぽちの道でできる作業内容」でも紹介しています。週1日からの通所もご相談いただけます。送迎は行っていないため、駅からの道のりをひとりで通えそうかは見学のときに一緒に確かめてください。
ご相談はお問い合わせフォームかLINEで受け付けています。本人の体調や予定に合わせて見学の日程を決め、支援者の方の同行や事前に伝えたいことも、そのときに調整します。体験の時間や内容、工賃は、見学やご相談のときにご案内します。
PC・AI作業のB型体験で支援者が迷いやすいことのよくある質問
Q. 相談支援専門員がB型の体験に同席して、本人の作業の様子を観察してもいいですか?
A. 本人が希望し、事業所が受け入れられる場合は、同席して様子を見る形も考えられます。可否や人数は事業所ごとに違うため、日程を決める段階で相談してください。ぽちぽちの道では、見学・体験のご相談時に調整します。
Q. パソコン作業のB型体験で入力ミスが多かった本人は、PC作業に向いていないのでしょうか?
A. 入力ミスの数だけで、PC作業に向いていないとは言えません。初めての体験では緊張や不慣れが結果に出やすいため、手順を理解して次の操作に進めたかもあわせて振り返ってください。
Q. 生成AIを使う作業の体験では、支援者は本人のどんな様子に注目すればいいですか?
A. AIの答えをそのまま使うか、読み直したり違和感を口にしたりするかに注目すると、振り返りの材料になります。体験の時点でできなくても、確かめ方を教わって試せたかを見れば十分です。
Q. B型の体験利用と就労選択支援のアセスメントは、同行する支援者から見て何が違いますか?
A. 体験利用は本人が事業所や作業との相性を確かめる場で、就労選択支援は適性や意向を整理する障害福祉サービスです。就労選択支援の支給決定期間は原則1か月で、多機関のケース会議を経て結果が作られます。B型の新規利用で必要かどうかは、お住まいの市区町村で確認してください。
Q. 体験のあと本人は「楽しかった」と言うのに翌日寝込んでいたら、支援者はどう振り返ればいいですか?
A. 「楽しかった」という気持ちと翌日の疲れは、どちらも本人の大切な情報として受け止めます。短い時間や少ない日数から始めるなど、疲れを減らす条件を本人と考えてください。不調が続く場合は、主治医や医療機関への相談を勧めましょう。
まとめ
B型の体験で支援者が見極めたいのは、向き不向きの結論ではなく、どんな条件なら続けやすいかという手がかりです。6つの観点で様子を見て、振り返りでは事実と見立てを分け、次の一歩を本人が選べるようにしましょう。制度の個別の判断は、相談支援専門員と市区町村の窓口で確認してください。
ぽちぽちの道は、志木駅東口から徒歩2分、週1日からの通所も相談できるIT・パソコン作業に特化したB型事業所です。支援者の方からのご相談だけでも大丈夫です。関連記事は「家族・支援者向けB型ガイド総まとめ」と「B型事業所の選び方チェックリスト」にまとめています。
- 見学だけでもOK
- その場で決めなくてOK
- ご家族・支援者と参加OK
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

