生活保護を受けながらB型に通うと、工賃や障害年金を福祉事務所に申告することになります。この記事では、生活保護の収入申告の頻度、働いて得た収入の基礎控除、通所の交通費の扱い、申告書に添える明細を、厚生労働省の実施要領と志木市の資料をもとに、本人・ご家族の方向けに整理します。
生活保護の収入申告とは?工賃や年金は、決められた時期に福祉事務所へ届け出ます
生活保護の収入申告とは、給料や工賃、年金、仕送りなど世帯に入ったお金を、福祉事務所に届け出る手続きのことです。申告した収入は保護費の計算に使われ、最低生活費から収入を差し引いた額が保護費になります。働いて得た収入には基礎控除というしくみがあり、得た額がそのまま保護費から引かれるわけではありません。
まず押さえておきたいのは、次の3点です。
- 届け出は義務:生活保護法第61条は、収入や支出など生計の状況に変動があったときは、すみやかに福祉事務所に届け出なければならないと定めています
- 頻度は国の通知に目安がある:厚生労働省の課長通知では、働けると判断された人は収入の有無にかかわらず原則毎月、働くことが難しいと判断された人は少なくとも12か月ごとに申告させるとされています
- 様式や締め切りは福祉事務所ごとに違う:申告書の書き方や提出日は、担当のケースワーカーに確認します
厚生労働省「生活保護制度」のページでも、受給中は収入の状況を毎月申告すると案内されています。B型に通うこと自体の考え方は「生活保護を受けながらB型に通えるのか」で紹介しています。
申告した収入はどう計算される?年金は受給額、働いた収入には控除があります
収入の種類によって、保護費の計算での扱いが変わります。根拠は厚生労働省の次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」の第8「収入の認定」です。
| 収入の種類 | 実施要領での扱い | 控除など |
|---|---|---|
| 障害年金などの年金 | 実際の受給額を認定する | 受け取るための交通費などの実費は認定できる |
| 会社などで働いた給料 | 基本給や手当を含む収入総額を認定する | 基礎控除、社会保険料・所得税・通勤費などの実費 |
| 少額で不安定な稼働収入 | 月額15,000円をこえる部分を認定する | 受け取るための交通費などを差し引いた額で判断 |
| B型の工賃 | 実施要領に名指しした記載は見当たらない | 扱いは福祉事務所に確認する |
障害年金は、実際に受け取った額がそのまま収入になります
年金は、実際の受給額が収入として認定されます。厚生労働省の局長通知「生活保護法による保護の実施要領について」の第8では、数か月分をまとめて受け取る年金は、次の受給月の前月までの各月に分けて認定するとされています。障害年金がいつ、何か月分ずつ振り込まれるかは「障害年金の支給日・振込日はいつ?」で確認できます。基礎控除の定めは働いて得た収入についてのもので、年金には当てはまりません。障害年金と保護費の関係は「障害年金と生活保護は両方もらえる?」、障害のある人に上乗せされる加算は「生活保護の障害者加算」で解説しています。
働いて得た収入には、金額に応じた基礎控除があります
基礎控除とは、働くことに伴う経費を補い、働く意欲を支えるために、就労収入から一定額を差し引いて収入を認定するしくみです。次官通知の別表「基礎控除額表」(厚生労働省の法令等データベースで2026年9月26日に確認)では、世帯でいちばん収入の多い人(1人目)の控除額は次のとおりです。
| 当月の就労収入 | 基礎控除額(1人目) |
|---|---|
| 0〜15,000円 | 収入の全額 |
| 15,001〜15,199円 | 収入と同じ額 |
| 15,200〜18,999円 | 15,200円 |
| 19,000〜22,999円 | 15,600円 |
| 23,000〜26,999円 | 16,000円 |
| 27,000〜30,999円 | 16,400円 |
表は4,000円きざみで続き、世帯で2人以上働いている場合、2人目以降の人は別の欄の額になります。たとえば就労収入が月20,000円で1人目の欄が当てはまるとすると、控除は15,600円で、収入として認定されるのは4,400円です。このほか、おおむね3年以上働けなかった人が継続性のある職業についたときの新規就労控除(月12,900円・6か月間)などもあります。
B型の工賃に基礎控除が使えるかは、福祉事務所に確認します
実施要領で基礎控除の対象とされているのは、勤労(被用)収入、農業収入、農業以外の事業収入です。B型は雇用契約を結ばずに作業し、その対価として工賃を受け取る働き方で、工賃をどの区分で扱うかを名指しした記載は、今回確認した実施要領の範囲では見つかりませんでした。工賃にどの控除が使えるかは、担当のケースワーカーに確認してください。工賃と給料の違いは「工賃とは?平均額と給料との違い」にまとめています。
収入申告書に書くことと、添えて出すもののチェックリスト
収入申告書には、収入を得た先、収入の有無、金額、内訳を書くのが基本です。次官通知の第8では、申告は必要に応じて書面で行い、証明できる資料があれば必ず提出させるとされています。提出前に、次の項目を確認しておきましょう。
- □ 収入の種類(工賃・給料・年金・仕送りなど)と、受け取った先の名前を書いたか
- □ 金額は、差し引かれる前の額と実際に受け取った額の両方がわかるようにしたか
- □ B型の工賃の明細(支給明細)を添えたか
- □ 工賃が振り込まれた通帳の該当ページを見せられるか
- □ 年金の振込通知書や年金額改定通知書など、年金のハガキが届いていないか
- □ 事業所から交通費などの支給がある場合、その内訳がわかるものを用意したか
- □ 収入がなかった月も、申告が必要かどうか確認したか
志木市の「生活保護のしおり」(令和7年4月改正)は、届出の義務として、毎月の収入や年金のハガキが届いたとき、新しく働いたときや働けなくなったときを挙げています。志木市福祉事務所は、福祉部 生活援護課(電話048-473-1457・直通)です。
B型の工賃をもらっている人の場合(申告の流れ)
B型の工賃は毎月の金額が変わりやすいので、次の順番で申告の流れを決めておくと迷いにくくなります。
- 通い始める前に伝える:B型に通うこと、週に何日通うか、交通費がかかるかを担当のケースワーカーに伝えます。生活保護受給世帯のB型の利用者負担は、厚生労働省「障害者の利用者負担」で負担上限月額0円の区分です(詳しくは「B型事業所の利用料」)。
- 支払い日を確認する:工賃は月ごとに計算され、翌月などに支払われるのが一般的です(「B型の工賃の支払い」)。作業した月と受け取る月がずれるため、どちらの月の収入として書くかをケースワーカーに確認します。
- 明細を保管する:工賃の明細は申告のたびに使うので、月ごとにまとめておきます。
- 金額が変わったら伝える:通所日数が増えて工賃が上がった、体調を崩して休みが続いた、といった変化も届け出の対象になります。
通所の交通費は、必要経費や移送費として扱われることがあります
通所の交通費は、保護費の計算で考慮される場合がありますが、扱いは福祉事務所の判断です。実施要領には、会社などで働いた収入から通勤費の実費を必要経費として差し引く定めと、障害者支援施設などに通所する人が交通費を使う以外に通う方法がない、またはきわめて難しいときに、必要最小限度の交通費を移送費として認める定め(局長通知 第7の2の(7))があります。B型への通所がどちらに当たるかは、定期券の写しや領収書を持って相談してください。
事業所からの交通費の支給や、自治体の通所交通費の助成も、申告の対象になるかを確認します。次官通知には、障害のある人の福祉のために自治体が条例などにもとづき定期的に支給するお金のうち、1人月8,000円以内の額は収入として認定しないという定めがあります。交通費の負担や助成の全体像は「B型の通所にかかる交通費」で紹介しています。
収入を申告しなかったら?返還を求められることがあります
収入を申告しなかったり、少なく書いたりすると、あとで保護費の返還を求められることがあります。生活保護法第78条は、不正な手段で保護を受けた人から、保護費の全部または一部を徴収し、さらにその額に100分の40を掛けた額以下を上乗せして徴収できると定めています。
志木市の「生活保護のしおり」では、申告をしないで働いて得た収入は基礎控除などの適用が受けられなくなり、全額返還になると説明されています。工賃が少額でも、申告し忘れに気づいたら、その時点で担当のケースワーカーに伝えてください。
ぽちぽちの道の場合
毎月の収入申告と、B型への通所を両立できるか不安に思う方もいます。ぽちぽちの道では、保護費の額や控除の可否は判断できず、監修のサービス管理責任者も生活保護の専門家ではありません。個別の判断は福祉事務所のケースワーカーにご相談ください。通所のペースや工賃の支払いの流れは、見学のときにご説明します。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です。送迎は行っていないため、駅からの通い方と交通費のかかり方を見学時に一緒に確認できます。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、週1日からの通所も相談できます。工賃は見学時にご案内します。ケースワーカーに相談する前の段階でも、見学やLINEでの相談を受け付けています。
生活保護の収入申告についてよくある質問
生活保護の収入申告は、毎月しないといけませんか?
国の課長通知では、働けると判断された人は原則毎月、働くことが難しいと判断された人は少なくとも12か月ごとに申告させるとされています。収入の増減が少ない常用雇用の人などは3か月ごとでもよいとされています。自分がどの頻度になるかは、担当のケースワーカーに確認してください。
B型の工賃が少ない月でも、生活保護の収入申告は必要ですか?
金額が少なくても、工賃は申告してください。生活保護法第61条は、収入に変動があったときの届け出を義務としています。申告しないで得た収入は控除が受けられなくなることがあるため、明細を添えて届け出ておくと安心です。
生活保護を受けながら働いたら、保護費はいくら減りますか?
就労収入から基礎控除などを差し引いた額が収入として認定され、その分だけ保護費が減るしくみです。基礎控除額表では、1人目の場合、月15,000円までの就労収入は全額が控除されます。B型の工賃にこの控除が当てはまるかは、福祉事務所に確認してください。
B型に通う交通費は、生活保護の収入申告で差し引いてもらえますか?
差し引かれる場合もありますが、福祉事務所の判断です。実施要領には、通勤費の実費を必要経費とする定めや、施設への通所に交通費が欠かせない場合に移送費を認める定めがあります。定期券の写しや領収書を持って、担当のケースワーカーに相談してください。
生活保護の収入申告を忘れていたときは、どうすればいいですか?
気づいた時点で、できるだけ早く担当のケースワーカーに伝えてください。申告しなかった収入は、返還を求められることがあります。工賃の明細や通帳を持って相談すると、どの月の分かを整理しやすくなります。
まとめ
生活保護の収入申告は、工賃や障害年金などの収入を福祉事務所に届け出る手続きで、働けると判断された人は原則毎月が目安です。年金は受給額がそのまま収入になり、働いて得た収入には基礎控除がありますが、B型の工賃や交通費の扱いは福祉事務所の判断になります。明細を保管し、わからない点はケースワーカーに確認してください。
B型に通いながらの暮らし方が気になったら、見学の予約から始められます。見学だけでも大丈夫です。お金の制度をまとめて確認したい方は「障害のある人がもらえるお金・手当の一覧」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
どこに相談すればいいか迷ったら
お住まいの地域で相談するには
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

