障害者控除とは、本人や扶養している家族が税法上の障害者に当てはまるとき、所得税・住民税の計算で所得から差し引ける控除です。この記事では、令和8年分の控除額、障害者手帳の等級と「特別障害者」の関係、年末調整での扶養控除等申告書の書き方、確定申告で受ける方法を、国税庁の資料をもとに本人・ご家族の方向けに整理します。
障害者控除とは、本人や扶養している家族が障害者に当てはまるときに所得から差し引ける控除で、年末調整でも受けられます
障害者控除とは、納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが所得税法上の障害者に当てはまるとき、所得税の計算で一定の金額を所得から差し引ける所得控除のことです。控除が増えると税金をかける前の所得が小さくなるため、所得税が軽くなる場合があります。
国税庁「No.1160 障害者控除」(令和8年4月1日現在法令等)では、所得税の控除額を次のように示しています。
| 区分(所得税・令和8年分) | 当てはまる人 | 控除額 |
|---|---|---|
| 障害者 | 所得税法上の障害者に当てはまる人 | 27万円 |
| 特別障害者 | 障害者のうち、精神障害者保健福祉手帳1級・身体障害者手帳1級または2級など、障害の程度が重い人 | 40万円 |
| 同居特別障害者 | 特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族のうち、納税者・その配偶者・生計を一にする親族のいずれかと同居を常としている人 | 75万円 |
使う場面は大きく2つです。会社員など給与を受けている人は勤務先の年末調整で、自営業の人や年末調整で書きもれた人は確定申告で申告します。どちらも、書類に書いて出さない限り控除は反映されません。
手帳の等級で「障害者」と「特別障害者」が分かれます
所得税法上の障害者に当たるかどうかは、主に障害者手帳の種類と等級、知的障害の判定で決まります。No.1160に挙がっている主な範囲を、手帳ごとにまとめると次のとおりです。
| 手帳・判定 | 障害者(27万円) | 特別障害者(40万円) |
|---|---|---|
| 精神障害者保健福祉手帳 | 2級・3級 | 1級 |
| 身体障害者手帳 | 1級・2級以外の等級 | 1級・2級 |
| 知的障害の判定(療育手帳など) | 重度以外 | 重度 |
療育手帳について、国税庁「障害者控除に関するQ&A」は、重度として「A」(「マルA」「A2」など)と表示されている人は特別障害者とし、療育手帳は自治体によって「愛の手帳」などの名前で呼ばれることがあるとしています。ほかにも、精神上の障害により物事を判断する能力を欠く常況にある人(特別障害者)や、65歳以上で市町村長等の認定を受けている人なども対象です。
障害者に当たるかは、その年の12月31日の状態で見ます
国税庁の質疑応答事例「障害者控除の適用を受けることのできる年分」は、その年の12月31日の現況で判断する考え方を示し、手帳を受け取る前の年分にさかのぼって障害者控除を受けることはできないと回答しています。年の途中で手帳を受け取った場合でも、12月31日に持っていれば、その年から対象になる可能性があります。
身体障害者手帳(または戦傷病者手帳)を申請中の人については、国税庁「No.1186」が、申請中または交付を受けるための医師の診断書があり、手帳に記載される程度の障害が明らかな場合に控除を受けられるとしています。No.1186の対象は身体障害者手帳と戦傷病者手帳なので、精神障害者保健福祉手帳を申請中の場合は税務署に確認してください。手帳の種類と等級そのものは「障害者手帳の種類と等級」で解説しています。
年末調整では「扶養控除等(異動)申告書」のC欄に書きます
会社員などが障害者控除を年末調整で受けるときは、勤務先に出す「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄(様式ではC欄)に記入します。国税庁の手続案内「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」に令和8年分の様式と記載例が掲載されており、書き方は次の順です。
- だれが障害者に当たるかを確かめる:あなた本人、同一生計配偶者、扶養親族のどれに当たるかを確認します
- 区分を決める:一般の障害者、特別障害者、同居特別障害者のどれかを、前の章の表で確認します
- C欄の「障害者」にチェックを付ける:区分の表で、本人・同一生計配偶者・扶養親族のうち当てはまる欄にチェックを付け、扶養親族は人数を書きます
- 「障害者又は勤労学生の内容」欄を書く:障害の状態または交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(等級)を書きます。家族の場合は、その人の氏名も書き、特別障害者なら同居の有無も書きます
- 勤務先に出す:書き終えた申告書を、給与の支払者(勤務先)に提出します
内容欄は、たとえば「(家族の氏名)、精神障害者保健福祉手帳2級、令和○年○月○日交付」のように、手帳を見ながら書くと間違いにくくなります。国税庁の手続案内の添付書類の欄には、国内に住む家族の障害者控除で手帳の写しを付けることは挙がっていません。勤務先が独自に確認書類を求める場合もあるため、配られた案内に従ってください。
年の途中で手帳を受け取ったら、異動の申告書を出します
扶養控除等申告書は、原則としてその年の最初の給与を受ける日の前日までに出す書類です。国税庁の手続案内では、書いた内容に異動があったときは、異動の日のあと最初に給与を受ける日の前日までに、異動の内容を書いた申告書を出すよう案内しています。年の途中で手帳を受け取ったり等級が変わったりしたときは、「異動月日及び事由」欄も含めて書き直し、年末調整の前に勤務先へ伝えてください。
年末調整で漏れたときや自分で申告するときは、確定申告で受けられます
年末調整で障害者控除を書きもれたときや、自営業などで自分で確定申告をする人は、確定申告書に障害者控除を入れて申告します。国税庁「No.2030 還付申告」によると、納めすぎた所得税を取り戻す還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
ただし、源泉徴収された所得税がない人は、申告しても還付される所得税はないとされています。また、先ほどの質疑応答事例のとおり、手帳を受け取る前の年分にさかのぼることはできません。申告書は国税庁の確定申告書等作成コーナーでも作れます。工賃がある人の申告の考え方は「B型の工賃は確定申告が必要?」でまとめています。
障害のある本人が控除を受ける場合と、家族が受ける場合
障害者控除は、本人が自分の所得税で受ける場合と、扶養している家族が自分の所得税で受ける場合があります。どちらの申告書に書くかで手続きの場所が変わるため、分けて見ていきます。
本人が受ける場合(工賃・障害年金がある人)
本人が障害者控除を使う意味があるのは、本人に所得税がかかる収入があるときです。日本年金機構の「よくある質問」では、障害年金は所得税および復興特別所得税の課税対象になっていない(非課税)ため、公的年金等の源泉徴収票も送付されないとしています。
B型の工賃は雇用契約に基づく給与とは扱いが異なり、税制上は雑所得などになりうるとされますが、扱いは個別の事情によります。アルバイトなどで給与を受けている本人は、その勤務先に出す扶養控除等申告書のC欄で「本人」の欄にチェックを付けます。工賃と年金での暮らし方は「工賃と障害年金だけで生活できる?」、B型とアルバイトの両立は「B型に通いながらバイトはできる?」で紹介しています。
家族が受ける場合(扶養している人)
家族が障害者控除を受けるには、障害のある人がその家族の同一生計配偶者か扶養親族に当たる必要があります。国税庁「No.1180 扶養控除」は、扶養親族の要件の一つを年間の合計所得金額58万円以下とし、令和8年12月1日に施行され令和8年分から適用される金額は「62万円以下」としています。
障害者控除は、扶養控除の対象にならない16歳未満の扶養親族にも使えます。同じ家計に働く家族が2人以上いるときは、だれの申告書で控除を受けるかを家族で決め、ほかの家族が控除を受ける人は申告書の「D」欄に書きます。
住民税の障害者控除と非課税の基準
住民税にも障害者控除があり、扶養控除等申告書は住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と一つの様式にまとめられています。志木市「個人市・県民税(住民税)について」(2026年8月12日更新)は、本人が障害者で前年中の合計所得金額が135万円以下(給与の収入金額では204万4千円未満)の人は住民税が課税されないとしています。住民税の控除額や令和8年度の基準は、お住まいの市区町村の税務課で確認してください(志木市は課税課 市民税グループ、048-473-1126)。
B型に通っている家族がいる人の場合は、扶養と障害者控除を分けて考えます
B型に通う子やきょうだいを扶養している家族は、「扶養に入っているか」と「障害者控除を受けられるか」を分けて考えると整理しやすくなります。B型に通っていることが控除の条件になるわけではなく、手帳の種類・等級と、扶養親族に当たるかどうかで決まります。
| 観点 | 扶養控除 | 障害者控除 | 健康保険の扶養 |
|---|---|---|---|
| 何の制度か | 扶養している家族がいることへの所得税の控除 | 障害者に当たる家族がいることへの所得税の控除 | 家族の健康保険の被扶養者になれるか |
| 対象 | 16歳以上の控除対象扶養親族 | 障害者に当たる同一生計配偶者・扶養親族(16歳未満も含む) | 加入している健康保険の基準で決まる |
| 金額 | 一般38万円など年齢・同居で異なる | 27万円・40万円・75万円 | 税の控除ではない |
| 書く場所 | 扶養控除等申告書 | 扶養控除等申告書のC欄 | 家族の勤務先・健康保険の手続き |
| 相談先 | 勤務先・税務署 | 勤務先・税務署 | 勤務先・加入している健康保険 |
扶養控除と障害者控除は別の控除で、要件を満たせば両方を受けられる場合があります。一方で、工賃やほかの収入が増えて扶養親族の所得の要件を超えると、家族の側で扶養控除も障害者控除も受けられなくなることがあります。工賃と扶養の関係は「B型の工賃で扶養は外れる?」で、税と社会保険の違いと確認先を解説しています。
家族の年末調整で確認したい点は次のとおりです。
- B型に通う家族の手帳の種類・等級・交付年月日を控えたか
- その家族を、だれの扶養控除等申告書に書くか決めたか
- 同居しているか(特別障害者の場合は75万円になるかに関わる)
- その年の工賃やほかの収入の見込みを把握したか
- 年の途中で手帳を受け取った場合、異動の申告書を勤務先に出したか
ぽちぽちの道の場合
年末調整の書類が配られる時期になると、「うちの子の手帳は何級で書けばいいのか」「扶養に入れたままでいいのか」と迷うご家族もいます。ぽちぽちの道では、控除を受けられるかどうかや税額を判断することはできません。監修のサービス管理責任者も税の専門家ではないため、個別の判断は勤務先の担当者、税務署、市区町村の税務課にご相談ください。そのうえで、どこに何を聞けばよいかを一緒に整理することはできます。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です。送迎は行っていないため、見学のときに通い方を一緒に確認します。
作業内容はパソコン作業が中心で、データ入力、Canvaでの画像・SNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べ物などに取り組んでいます。パソコンが苦手な方や未経験の方も歓迎しており、週1日からの通所も相談できます。工賃は見学時にご案内します。お金の不安をふくめて話を聞いてみたい方は、見学やLINEでの相談から始めても大丈夫です。
障害者控除と年末調整についてよくある質問
精神障害者保健福祉手帳3級でも、年末調整で障害者控除を受けられますか?
国税庁「No.1160」では、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人は所得税法上の障害者に当たるとされており、3級も含まれます。3級は特別障害者ではないため、所得税の控除額は27万円です。本人か扶養している家族が、勤務先に出す扶養控除等申告書のC欄に書いて申告します。
扶養控除等申告書の「障害者又は勤労学生の内容」欄には何を書けばいいですか?
障害の状態または交付を受けている手帳などの種類と交付年月日、障害の程度(等級)を書きます。家族について書くときは、その人の氏名も書き、特別障害者であれば同居の有無も書きます。国税庁の手続案内に令和8年分の記載例があるため、手帳を手元に置いて見比べながら書くと安心です。
年の途中で障害者手帳を受け取った場合、その年の年末調整で控除を受けられますか?
障害者に当たるかはその年の12月31日の現況で判断するため、年の途中で受け取った場合も、その年から対象になる可能性があります。異動があったことを書いた扶養控除等申告書を、年末調整の前に勤務先へ出してください。間に合わなかったときは、確定申告で障害者控除を入れて申告できます。
年末調整で障害者控除を書き忘れたときは、何年前までさかのぼって申告できますか?
国税庁「No.2030」によると、還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、手帳を受け取る前の年分にさかのぼって控除を受けることはできません。源泉徴収された所得税がない年は還付もないため、どの年が対象になるかは税務署で確認してください。
B型の工賃と障害年金だけの本人も、障害者控除の手続きをしたほうがいいですか?
障害年金は非課税とされているため、本人に所得税がかかる収入がなければ、控除を受けても所得税は変わりません。工賃は雑所得などになりうるとされ、扱いは個別の事情によります。本人の申告が必要かどうかは税務署で、家族の扶養控除等申告書に書けるかは家族の勤務先で確認してください。
まとめ
障害者控除とは、本人や扶養している家族が障害者に当てはまるときに所得から差し引ける控除で、令和8年分の所得税では障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。会社員などは年末調整で扶養控除等申告書のC欄に手帳の種類・等級・交付年月日を書き、漏れたときは確定申告で申告します。住民税の基準は市区町村の税務課で確認してください。
お金の不安も、まずLINEでの相談や見学から始められます。質問だけでも大丈夫です。お金の制度をまとめて確認したい方は「障害のある人がもらえるお金・手当の一覧」、手帳で変わることの全体像は「障害者手帳のメリット一覧」、事業所選びは「B型事業所の選び方チェックリスト」もあわせてご覧ください。
運営:ぽちぽちの道(株式会社イチドキリ)
控除とは別に、住民税そのものがかからない条件は「障害者の住民税が非課税になる条件」で解説しています。
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監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

