「B型の工賃は、どうしてこんなに安いの?」「月に数万円にも届かないのは普通?」と疑問を持った本人・ご家族・支援者の方へ。この記事では、B型の工賃が低くなりやすい理由を、雇用契約の有無、工賃の出どころを定めた国の基準、平均工賃の計算方法の3つから整理します。そのうえで、見学で工賃について聞いておきたい項目をチェックリストにしました。志木駅徒歩2分のB型事業所「ぽちぽちの道」がお伝えします。
B型の工賃が安いのは、雇用契約を結ばず「作業で得た収入」から支払う仕組みだから
B型の工賃が安いと言われる主な理由は、B型が雇用契約を結ばない福祉サービスで、工賃は事業所の生産活動の収入から経費を引いた額をもとに支払うと国の基準で決められているためです。時給で雇われる働き方とは、お金の決まり方がそもそも違います。まず押さえておきたいのは次の3点です。
- 雇用契約を前提としない:B型は「雇用契約に基づく就労が困難な人」のためのサービスで、受け取るお金は賃金ではなく工賃
- 工賃の原資は作業の売上:生産活動の収入から必要な経費を引いた額を、工賃として支払う決まりがある
- 通い方を体調に合わせられる:週の利用日数や時間が人によって違い、月額の平均にもその影響が出る
工賃の低さは、特定の事業所の姿勢だけで説明できるものではありません。工賃という言葉の基本は「工賃とは?B型事業所でもらえるお金と給料との違い」で解説しています。この記事は「なぜ低くなりやすいのか」という仕組みに絞ってお伝えします。
B型の工賃が低くなりやすい3つの構造的な理由
B型の工賃が低くなりやすい理由は、①雇用契約を結ばないこと、②工賃の原資が生産活動の収入に限られること、③利用日数や時間を本人に合わせて調整できること、の3つに分けると整理できます。どれも制度の成り立ちに関わる理由です。
理由1:雇用契約を結ばない「非雇用型」のサービスだから
就労継続支援B型とは、雇用契約に基づいて働くことが難しい人に、就労や生産活動の機会を提供する障害福祉サービスのことです。障害者総合支援法施行規則第6条の10では、A型を「雇用契約に基づく就労が可能」な人、B型を「雇用契約に基づく就労が困難」な人のためのサービスとして分けています。厚生労働省「障害福祉サービスの内容」の見出しも、A型は「雇用型」、B型は「非雇用型」です。
最低賃金との関係もここから整理できます。最低賃金法が最低賃金額以上の支払いを義務づけている相手は、労働基準法第9条の「労働者」です。B型の工賃は、次の理由2で見るとおり作業の収入をもとに支払うお金で、最低賃金額から時給を決める仕組みにはなっていません。
| 比べる項目 | 就労継続支援B型 | 就労継続支援A型(雇用型) |
|---|---|---|
| 対象になる人(施行規則) | 雇用契約に基づく就労が困難な人 | 雇用契約に基づく就労が可能な人 |
| 雇用契約 | 定義に含まれない(非雇用型) | 結ぶ(雇用型) |
| 受け取るお金の呼び方 | 工賃 | 賃金 |
| お金の決まり方 | 生産活動の収入から経費を引いた額をもとに支払う | 指定の申請時に、最低賃金を支払える事業計画かを自治体が確認する |
| 令和6年度の全国平均(月額) | 24,141円 | 91,451円 |
A型の指定時の確認は、厚生労働省の通知「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」に書かれています。A型にも雇用契約を結ばない利用者がいる場合があり、表のA型は雇用契約を結ぶ場合の比較です。
理由2:工賃は「生産活動の収入-必要な経費」から支払うと決まっているから
B型の工賃は、事業所が作業で得た収入から、その作業に必要な経費を差し引いた額に相当する金額を支払うお金です。国の指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準第201条第1項に、この決まりが書かれています。
さらに同じ基準では、工賃の支払いに必要な額を、事業所が福祉サービスの提供に対して受け取る給付費(自立支援給付)から充てることは、災害などやむを得ない場合を除いて原則として認められていません(第202条で準用する第192条第6項)。つまり工賃の水準は、受けている仕事の単価や量、材料費などの経費といった、生産活動そのものの収支に左右されます。
一人ひとりにいくら支払うか(時間単価にするか、作業量に応じるかなど)は、条文には書かれておらず、事業所ごとに決め方が違います。同じ第201条では、事業所に工賃の水準を高めるよう努める義務も定められています。
理由3:体調に合わせて利用日数や時間を調整できるから
B型は勤務日数や勤務時間を雇用契約で決める働き方ではないため、体調や生活リズムに合わせて、週に通う日数や1日の時間を少なめにして通う人もいます。通った日数や時間が少なければ、その月に受け取る工賃も少なくなりやすく、全体の平均額にも影響します。
この点は、平均工賃の計算方法が見直された経緯にも表れています。厚生労働省の「令和6年度工賃(賃金)の実績について」には、障害特性などにより利用日数が少ない方を受け入れる事業所に配慮し、令和5年度分から平均工賃月額の計算方法を変えたと注記されています。計算方法の違いは次の章で数字とあわせて見ていきます。
数字で見るB型の工賃|全国平均24,141円・埼玉県21,528円
厚生労働省によると、令和6年度のB型事業所の平均工賃は月額24,141円(全国18,245か所の報告値)で、ぽちぽちの道がある埼玉県は月額21,528円でした。全国平均は前年度の22,649円から106.6%に増えています。
| 区分 | 令和6年度(月額) | 令和5年度(月額) | 出典 |
|---|---|---|---|
| B型・全国平均 | 24,141円 | 22,649円 | 厚生労働省 |
| B型・埼玉県平均(新しい計算方式) | 21,528円 | 20,287円 | 埼玉県 |
| B型・埼玉県平均(従来の計算方式) | 16,717円 | 15,840円 | 埼玉県 |
| A型・全国平均(参考) | 91,451円 | 86,752円 | 厚生労働省 |
埼玉県の数字は、埼玉県「令和6年度平均工賃(賃金)実績(施設種別)」によるものです。令和5年度の全国平均は、令和8年3月に23,053円から22,649円へ修正されています。全国の利用者数や事業所数とあわせた統計は「就労継続支援B型のデータまとめ」にまとめています。
計算方法で平均額が変わるのは「通う日数の少ない人」の数え方の違い
平均工賃月額の計算方法によって、同じ埼玉県の同じ年度でも21,528円と16,717円の2つの数字があります。違いは、平均を出すときに割る人数の数え方です。埼玉県「工賃向上の推進」のページでは、B型の新しい計算方式を次のように説明しています。
- 年度内に支払った工賃の総額を出す
- 各日の利用者の延べ人数を、年間の開所日数で割って「1日の平均利用者数」を出す
- 工賃の総額を、1日の平均利用者数と年間の開所月数で割る
従来の方式は、工賃を支払った人の数を分母にしていたため、月に数日だけ通った人も1人として数えていました。短い日数で通う人が多い事業所ほど、従来の方式では平均が低く出やすかったことになります。なお、令和4年度までは従来の方式による数字(令和4年度は17,031円)なので、令和5年度以降の数字と並べて「急に上がった」と読むことはできません。
「月3,000円」は事業所全体の平均額の下限
国の基準第201条第2項では、利用者それぞれに支払われる1か月あたりの工賃の平均額が3,000円を下回ってはならないとされています。これは事業所全体の平均額の下限で、利用者一人ひとりに毎月3,000円以上を約束する決まりではありません。
埼玉県のページは、平均工賃は計算上の数字のため個々の利用者への支払額とは異なること、事業所のサービスの質は工賃の実績だけで判断されるものではないことも注意書きしています。
納得して選ぶための視点|見学で工賃について聞きたいチェックリスト
工賃に納得して事業所を選ぶには、平均額の大小を比べるより、「どう決まり、いつ支払われ、自分の通い方ならどうなるか」を見学で確かめるのが確実です。国の基準第201条第4項では、事業所は年度ごとに工賃の目標水準を決め、その目標と前年度の平均額を利用者に知らせることになっているので、質問すること自体は遠慮しなくて大丈夫です。
- [ ] 工賃は何で決まりますか(時間、作業の量、作業の種類など)
- [ ] 前年度の平均工賃と、今年度の目標はどのくらいですか
- [ ] 週に通う日数や1日の時間を少なめにした場合、工賃はどう計算されますか
- [ ] 体調不良で休んだ月は、工賃の計算はどうなりますか
- [ ] 工賃は月ごとに計算されますか。支払日と、現金か振込かを教えてください
- [ ] 工賃の決まりを書いた規程などを見せてもらえますか
- [ ] 工賃とは別に、利用料(自己負担)や昼食代などの費用はかかりますか
支払日や受け取り方の一般的な流れは「B型の工賃はいつ・どう支払われる?」、自己負担の仕組みは「B型事業所の利用料はいくら?」で確認できます。見学当日の流れや質問のしかたは「B型事業所の見学では何をする?」も参考にしてください。
気になる事業所があれば、工賃の説明を聞くつもりで見学を予約してみましょう。見学だけでも大丈夫です。
金額に納得できるかは、通う目的や体調によっても変わります。無理のないペースの考え方は「体調に波があっても続けるための工夫」、年金など他の収入とあわせた暮らしの見通しは「工賃と障害年金だけで生活できる?」で整理しています。
「工賃が低い=悪い事業所」とは限らない|不安なときの相談先
工賃が全国平均より低いことだけで、その事業所の支援が悪いと決めることはできません。作業の種類や通っている人の利用日数によって平均額は変わり、埼玉県も、工賃の実績は取組の成果を示す指標のひとつで、サービスの質は工賃の実績だけで判断されるものではないと注意しています。
一方で、工賃の決まり方の説明がない、休んだことを理由に説明のない減額がある、といった場合は、そのままにしないでください。まず事業所に説明を求め、それでも納得できないときは、担当の相談支援専門員や、お住まいの市区町村の障害福祉の窓口に相談できます。「おかしい」と感じたときの確かめ方は「B型事業所おかしいと感じたときに確認したいこと」でも整理しています。
志木市にお住まいの方の障害福祉の窓口は、市役所福祉部の共生社会推進課です。問い合わせ先は障がい者福祉グループ(048-473-1449)で、課のページは「共生社会推進課」、所在地は志木市中宗岡1丁目1番1号です。工賃を含むお金と制度の全体像は「障害のある方のお金と制度 総まとめ」から探せます。
ぽちぽちの道の場合(工賃の決まり方も、見学で率直にお話しします)
工賃の低さに疑問を持ったまま事業所を選ぶのは不安なものです。ぽちぽちの道では、見学のときに工賃の決まり方や金額についてもご案内し、質問にもお答えしています。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」東口から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です。2026年5月に開設しました。作業はパソコンが中心で、データ入力、Canvaでの画像やSNS素材づくり、生成AIを使った文章の下書きや調べもの、SNS投稿づくりなどに取り組みます。パソコンが苦手な方や未経験の方も、スタッフと生成AIがサポートします。
通い方は週1日からの相談ができるので、体調に合わせたペースと工賃の関係も、見学のときに一緒に確かめられます。昼食はお弁当(実費)を用意でき、送迎は行っていません。くわしい作業内容はサービス紹介ページで見られます。LINEでの相談や見学・体験の予約も受け付けているので、工賃の説明だけ聞いてみたいという段階でもお気軽にどうぞ。
B型の工賃が安い理由についてよくある質問
Q. B型の工賃が安いのは、事業所が利用者の取り分を少なくしているからですか?
A. 制度上は、生産活動の収入から必要な経費を引いた額に相当する金額を工賃として支払うよう、国の基準で決められています。工賃の低さは主に、作業の収入の規模や利用日数などの仕組みから生じます。個別の決め方に疑問があるときは、事業所に説明を求め、納得できなければ相談支援専門員や市区町村の窓口に相談してください。
Q. B型に通えば、毎月3,000円以上の工賃がもらえると決まっていますか?
A. 決まってはいません。国の基準の「3,000円」は、事業所が利用者に支払う1か月あたりの工賃の平均額の下限です。通った日数や作業の内容によって、一人ひとりの受け取る額はこれより少ない月もありえます。
Q. 埼玉県のB型の平均工賃に、21,528円と16,717円の2つの数字があるのはなぜですか?
A. 平均を出すときに割る人数の数え方が違うためです。21,528円は1日の平均利用者数を使う新しい計算方式、16,717円は工賃を支払った人の数を使う従来の方式による令和6年度の数字です。月に数日だけ通う人の扱いが変わるため、新しい方式のほうが高く出ます。
Q. B型の工賃の低さが気になるとき、雇用契約を結ぶA型も検討したほうがいいですか?
A. A型は雇用契約に基づいて働けることが前提のサービスで、金額だけで選べるものではありません。体調や働ける日数、目指したい働き方によって合うサービスは変わります。どちらが合うかは、相談支援専門員や市区町村の障害福祉の窓口と一緒に考えるのが確実です。
Q. ぽちぽちの道に週1日など少ない日数で通う場合、工賃の決まり方はどこで確認できますか?
A. 見学のときにご案内しています。ぽちぽちの道の工賃の決まり方や金額を説明し、週1日など少なめの日数で通う場合の考え方も、その場で相談できます。
まとめ
B型の工賃が安いと言われるのは、雇用契約を結ばない福祉サービスであること、工賃が生産活動の収入から経費を引いた額をもとに支払われること、体調に合わせて通う日数や時間を調整できることが重なっているためです。平均工賃は計算方法で見え方が変わる数字なので、金額の大小だけでなく、決まり方と支払い方、自分の通い方でどうなるかを見学で確かめると納得して選べます。
工賃の説明を聞いてみたい方は、ぽちぽちの道の見学へお越しください。見学だけでも大丈夫です。
- 見学だけでもOK
- その場で決めなくてOK
- ご家族・支援者と参加OK
何かを始めたい、新しい一歩を踏み出したい方へ
まずは、見学・相談から
始めてみませんか?

監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

