長く家にいる状態から社会復帰を考えたとき、いきなり就職を目標にすると、最初の一歩が重くなりがちです。この記事では、引きこもりから社会復帰するまでの段階を表で整理し、埼玉県と志木市で使える公的な相談窓口、就労継続支援B型を使える人の条件を、ご本人とご家族に向けてまとめました。
引きこもりからの社会復帰は、5つの段階を一つずつ進むほうが続きやすい
引きこもりから社会復帰するには、「いきなり就職」を目指すより、生活リズムを整えるところから段階を踏むほうが続きやすいです。段階ごとに目標を小さくすると、うまくいかない日があっても「前の段階に少し戻るだけ」と考えられます。どの段階から始めるかは人によって違い、飛ばしたり戻ったりしても問題ありません。
この記事でいう社会復帰とは、就職だけを指すのではなく、家族以外の人と話し、家の外に通う場所を持ち、働くことに近づいていく過程全体のことです。
- 生活リズムを整える
- 家族以外の人と話す(電話・メール・オンライン相談でよい)
- 家の外に居場所を持つ(週1回・短時間から)
- 働く準備をする(B型、就労移行支援、サポステなど)
- 働く(アルバイト、就職、障害者雇用など)
各段階の目安と、小さな行動の例は次のとおりです。
| 段階 | 目安になる状態 | 小さな行動の例 | 使える場所 |
|---|---|---|---|
| ①生活リズム | 昼夜が逆転している、日によって起きる時間がばらばら | 起床時間だけ決める、昼間に10分だけ窓辺で過ごす | 自宅 |
| ②家族以外と話す | 家族以外とほとんど話していない | 相談窓口にメールを1通送る、電話で名前を言わずに話してみる | ひきこもり地域支援センター、市の相談窓口 |
| ③家の外の居場所 | 近所への外出はできるが、通う場所がない | 週1回・1〜2時間だけ同じ場所へ行く | 居場所事業、デイケア、B型の見学・体験 |
| ④働く準備 | 通う場所に慣れてきた、作業をしてみたい | 週1日から作業に取り組む、日数を少しずつ増やす | B型、就労移行支援、サポステ、就労準備支援事業 |
| ⑤働く | 決まった日に通う生活が続いている | 短時間のアルバイトや、支援を受けながらの就職を考える | ハローワーク、就労支援機関 |
内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」(こども家庭庁が公開)では、広義のひきこもりにあたる人の割合が15〜39歳で2.05%、40〜64歳で2.02%でした。厚生労働省はこれを「50人に1人」と紹介しており、長く家にいる状態は珍しいことではありません。段階①の工夫は「生活リズムを整えるアプリ・ツール」で紹介しています。
引きこもりの相談ができる公的な窓口(埼玉県・志木市)
どこに相談すればよいか分からないときは、県の「ひきこもり地域支援センター」か、お住まいの市の総合的な相談窓口から始めるのが分かりやすいです。どちらも家族だけの相談を受け付けており、相談しても、すぐに何かを決める必要はありません。
ひきこもり地域支援センターとは、ひきこもりの状態にある人と家族の相談を受け、必要な支援につなぐ公的な窓口のことです。厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」によると、すべての都道府県と指定都市に設置されており、埼玉県では「埼玉県ひきこもり相談サポートセンター」が担っています。
| 窓口 | どんな人向け | どうつながるか |
|---|---|---|
| 埼玉県ひきこもり相談サポートセンター(ひきこもり地域支援センター) | ひきこもりの状態にある本人・家族(さいたま市を除く県内) | 電話 048-971-5613、メール、予約制の来所、Zoom相談 |
| 自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度) | 仕事が見つからない、働きたくても働けないなど生活に困っている人 | 市区町村の窓口へ。志木市は基幹福祉相談センター |
| 地域若者サポートステーション(サポステ) | 働くことに踏み出したい15〜49歳で、仕事や学校に行っていない人 | 近くのサポステに電話(無料) |
| 埼玉県立精神保健福祉センター | こころの健康に悩む、おおむね高校生年代以上の人と家族(さいたま市を除く) | 予約専用電話 048-723-6811(平日9時〜17時) |
| 保健所(志木市は朝霞保健所) | こころの健康や、受診するかどうかで迷っている人と家族 | 朝霞保健所 048-461-0468 |
埼玉県ひきこもり相談サポートセンターの相談時間は、月曜と水曜〜土曜の10時〜18時(受付は17時30分まで)です。窓口の一覧は埼玉県「埼玉県のひきこもり支援に関する相談窓口の御案内」にあります。サポステ(公式「地域若者サポートステーション」)は埼玉県内では川口市・川越市・深谷市・さいたま市・春日部市にあります。ほかの窓口の費用は、予約のときに確かめると安心です。
志木市に住んでいる場合の窓口
志木市では、市役所の共生社会推進課内にある「志木市基幹福祉相談センター」が、ひきこもりを含む福祉の相談を受け付けています。志木市「基幹福祉相談センター(福祉の相談窓口)」によると、受付は平日8時45分〜16時30分(予約優先)、直通電話は048-456-6021で、電話相談は匿名でもかまいません。必要に応じて自宅への訪問相談も行っています。
志木市は、社会に出るのが不安な人や仕事から長く離れている人に向けて、1年間のプログラムで働く準備をする「就労準備支援事業」も実施しています(制度の説明は厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」)。段階④の選択肢の一つです。
B型は、引きこもりの人が誰でも使えるわけではありません
就労継続支援B型は障害福祉サービスなので、障害や病気があり、市区町村から支給決定を受けて受給者証をもらった人が利用します。引きこもりの状態そのものは、B型の利用条件ではありません。長く家にいることと、障害や病気があることは別のことです。
就労継続支援B型とは、雇用契約を結ばずに、体調や自分のペースに合わせて作業に取り組める福祉サービスのことです。対象者の例は厚生労働省「障害福祉サービスについて」に示されています。障害者手帳は必須とは限らず、診断書などで状態が確認できれば対象になり得ます(「障害者手帳がなくてもB型は使える?」)。申請の手順は「障害福祉サービス受給者証をもらうには?」で説明しています。
働く準備の場は、B型のほかにもあります。使える条件が違うので、表で比べておきます。
| 働く準備の場 | 主な対象 | 障害や病気の条件 | 向いている段階 |
|---|---|---|---|
| 就労継続支援B型 | 障害や病気があり、自分のペースで作業したい人 | あり(受給者証が必要) | ③〜④ |
| 就労移行支援 | 一般企業への就職を目指す65歳未満の障害のある人 | あり(受給者証が必要)。利用期間に上限がある | ④ |
| 地域若者サポートステーション | 働くことに踏み出したい15〜49歳 | 問われない | ②〜④ |
| 就労準備支援事業(市区町村) | すぐに働くことが難しく、仕事や生活に困っている人 | 問われない | ③〜④ |
診断を受けていない人や、しばらく通院していない人は、まず相談窓口や医療機関で今の状態を話すところから始めます。障害や病気が関係していそうなら、主治医や市区町村の窓口と一緒に受給者証の手続きを考える、という順番です。「B型に通うために診断をもらう」と考える必要はありません。
社会復帰が怖いときは、怖さの中身を分けて小さくする
社会復帰が怖いと感じるのは、長く家にいた人にとって自然なことです。怖さを無理に消そうとするより、「何が怖いのか」を分けて、一つずつ小さくするほうが動きやすくなります。
| 怖さの中身 | 小さくする工夫 |
|---|---|
| 何を話せばいいか分からない | 伝えたいことを3行だけメモし、読み上げてよいと考える |
| 声で話すのが負担 | メールやLINEなど、文字でやりとりできる窓口から始める |
| 外に出るのが久しぶり | 見学の前に、建物の前まで行って帰る「下見」だけをする |
| 人が多い場所が苦手 | 見学の時間を短くしてほしい、人の少ない時間がよいと先に伝える |
| 続かなかったらどうしよう | 最初は週1回と決め、続けるかどうかは後で考える |
最初の連絡は、次のような短い一文で十分です。
- 「長く家にいて、働くことを考え始めました。まず話だけ聞きたいです」
- 「家族のことで相談したいです。本人はまだ来られません」
- 「電話が苦手なので、メールでやりとりできますか」
相談の場で、家にいた理由を細かく話す必要はありません。「しばらく家で過ごしていました」の一言で伝わります。家から出ること自体が不安な人は「家から出るのが不安な方へ」、働くこと自体が怖い人は「働くのが怖いと感じたら」、一度も働いたことがない人は「就労経験ゼロからのB型」も参考になります。
ご家族ができること:責めない声かけと、家族だけの相談
ご家族にできることは、本人を急かさず、家の中を安心できる場所に保ちながら、家族だけでも相談先を持っておくことです。声をかけるときは、将来を問い詰めるより、今日の生活の話をするほうが会話が続きやすくなります。
- 避けたい声かけ:「いつまで家にいるの」「普通はもう働いている年齢だよ」
- 言い換えの例:「お昼、一緒に食べる?」「相談できる場所の資料をもらってきたから、置いておくね」
先に家族が窓口とつながっておくと、本人が「話してみようかな」と思ったときにすぐ案内できます。親の高齢化が気になる場合は「8050問題とは?」、関わり方をもっと詳しく知りたい場合は「引きこもり期間が長い家族をどう支える?」をあわせて読んでみてください。
つらさが強いときは、医療や電話相談へ
眠れない、食べられない状態が続く、気持ちの落ち込みが強いときは、社会復帰の段階を考えるより先に、主治医や医療機関、保健所に相談してください。「死にたい」「消えたい」と感じるときは、次の電話窓口で話を聞いてもらえます(厚生労働省「まもろうよ こころ」で2026年9月26日に確認)。
- #いのちSOS:0120-061-338(無料・毎日24時間)
- よりそいホットライン:0120-279-338(無料・24時間)
- いのちの電話:0120-783-556(無料・毎日16時〜21時、毎月10日は8時〜翌日8時)
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(通話料がかかります。受付の曜日・時間は都道府県ごとに異なります)
命に危険が迫っているときは、迷わず119番に連絡してください。
ぽちぽちの道の場合(段階③④の「週1回、家の外に通う場所」として)
家の外に週1回だけ通う場所を探している段階なら、B型の見学や体験がその候補になります。ぽちぽちの道がお手伝いできるのは、表の段階③「家の外の居場所」と段階④「働く準備」です。医療機関ではないので、診断や受給者証のことは主治医や市区町村の窓口と一緒に進めます。
ぽちぽちの道は、東武東上線「志木駅」から徒歩2分にある、IT・パソコン作業に特化した就労継続支援B型事業所です(2026年開設・運営:株式会社イチドキリ)。
- 週1日からの通所を相談できる:段階③の「週1回、同じ場所へ行く」から始められます
- パソコンに向かって進める作業が中心:作業内容はデータ入力、Canvaでの画像づくり、生成AI(ぽちぽちAI)を使った文章の下書きなどで、パソコンが苦手な人も文字入力からスタッフが一緒に進めます
- 文字だけで相談できる:電話が苦手な人は、LINEで質問を送るところからで大丈夫です。ご家族からの相談も受け付けています
東上線沿線で週1回から通える場所を考えている人は「ひきこもり気味の方へ|東上線沿線のB型を週1から検討する始め方」も読んでみてください。見学を決める前に、LINEで相談して様子を聞くだけでもかまいません。工賃は作業内容や通所日数によって変わるため、詳しくは見学時にご案内します。
引きこもりからの社会復帰についてよくある質問
引きこもりから社会復帰するには、まず何から始めればいいですか?
起きる時間を決めるなど生活リズムを整えることと、家族以外の誰かに今の状況を話すことから始めるのがおすすめです。話す相手は、県のひきこもり地域支援センターや市の相談窓口でかまいません。
引きこもりの相談は、本人ではなく家族だけで行ってもいいですか?
はい、家族だけの相談で大丈夫です。埼玉県ひきこもり相談サポートセンターも志木市基幹福祉相談センターも、家族からの相談を受け付けています。
障害の診断を受けていない引きこもりの人でも、B型に通えますか?
B型は障害福祉サービスなので、障害や病気があり受給者証を受けることが必要です。診断がない場合は、まず相談窓口や医療機関で今の状態を話すところから始めます。障害や病気の条件を問わないサポステや就労準備支援事業という選択肢もあります。
ニートや無職の期間が長くても、社会復帰はできますか?
期間が長くても、段階を分けて少しずつ進めれば社会復帰を目指せます。いきなり就職を目標にせず、家族以外と話す、週1回だけ通う場所を持つといった手前の目標から始めると続けやすいです。15〜49歳ならサポステも使えます。
社会復帰が怖くて、相談の電話もかけられません。どうすればいいですか?
電話ではなく、メールやLINEなど文字で相談できる窓口から始めてみてください。「まず話だけ聞きたいです」という一文だけでも相談は始められます。家族に代わりに連絡してもらう方法もあります。
まとめ
引きこもりから社会復帰するには、生活リズム、家族以外との会話、週1回の居場所、働く準備、働くという段階を一つずつ進むほうが続きやすいです。相談先に迷ったら、埼玉県ひきこもり相談サポートセンターや志木市基幹福祉相談センターを頼ってください。B型を使えるかどうかも、相談しながら確かめられます。
見学の前に知っておきたいことは「B型事業所の選び方チェックリスト」にまとめています。家にいる自分を責めてしまうときは「働いていない罪悪感がつらい方へ」も参考になります。ぽちぽちの道では、文字だけの相談でも大丈夫です。気になったら、LINEで一言送るところから始めてみてください。
どこに相談すればいいか迷ったら
お住まいの地域で相談するには
- 1
- 2
- 3

監修者
田中 眞奈美(サービス管理責任者)
介護職、生活支援員業務、就労移行支援事業所での管理者業務など、介護・福祉業界にて多彩な経験を持つ福祉のプロフェッショナル。ぽちぽちの道では、サービス管理責任者として個別支援計画の策定および支援全体のマネジメントを担う。

執筆者
徳永 崇志(職業指導員・株式会社イチドキリ 代表取締役)
岡山大学教育学部出身。株式会社日立システムズでエンジニアとしてキャリアをスタートし、株式会社リクルートで教育系SaaS「スタディサプリ」の法人営業に従事。その後、複数社で生成AIを活用したプロダクトの事業立ち上げを経験。ぽちぽちの道では、生成AI・ITを活用した生産活動の職業指導を担当。厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター」講座修了。

